Q&A

労務Q&A

中小企業の経営者・労務担当の方から実際によく寄せられる質問に、根拠となる条文を示したうえでお答えしています。制度の説明で終わらせず、 「ご相談のケースだとどうなるか」という当てはめまで書くようにしています。

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労働時間

36協定の特別条項を使えば、繁忙期は月何時間まで残業させられますか?上限を超えるとどうなりますか?

特別条項を結んでいても、単月では休日労働を含めて100時間未満が絶対の上限です。「特別条項があれば青天井」ではありません。守るべき上限が4つあるので、順に確認してください。

まず原則として、36協定で延長できる時間外労働は月45時間・年360時間までです。特別条項は、臨時的な特別の事情がある場合にこれを超えられる仕組みですが、その場合も次の4つをすべて満たす必要があります(労働基準法36条5項・6項)。

  1. 年720時間以内(時間外労働のみ。休日労働は含まない)
  2. 単月100時間未満(時間外労働+休日労働の合計)
  3. 複数月平均80時間以内(2か月・3か月・4か月・5か月・6か月のいずれの平均も。時間外労働+休日労働の合計)
  4. 月45時間を超えられるのは年6か月以内

見落とされやすいのが2と3です。この2つだけは休日労働を合算して判定します。旅館業のように休日出勤で人手を確保する場面では、時間外だけを見て安心していると超えてしまいます。また3の「複数月平均」は、直近2か月の平均も、直近6か月の平均も、すべてが80時間以内でなければなりません。8月に95時間使うと、9月以降を大幅に抑えないと平均が超えます。繁忙期は単月ではなく数か月単位で設計する必要があるのは、このためです。

上限を超えた場合、労働基準法違反として6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(同法119条)。実務上は労働基準監督署の是正勧告が先に来ることが多いですが、上限規制違反は是正勧告の対象として重く扱われます。

あわせて確認していただきたい点が3つあります。1つ目は、法律の上限以内であっても、自社の36協定で定めた時間を超えれば違法になるということです。協定で「月60時間まで」と定めていれば、その60時間が実際の上限になります。2つ目は、特別条項を使う場合、健康福祉確保措置などを協定で定めておく必要があることです。3つ目は、1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合、原則の限度が月42時間・年320時間に下がる点です。

いま繁忙期の最中とのことなので、まずは調理場とフロントの直近数か月の実績時間を、休日労働を含めて集計してください。残りの月にどれだけ余裕があるかは、それを出さないと判断できません。あわせて、自社の36協定に何時間と書いてあるかもご確認ください。

根拠労働基準法36条4項〜6項(時間外労働の上限) / 労働基準法119条(罰則)

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年次有給休暇

週3日勤務のアルバイトにも有給休暇は必要ですか?年5日の取得義務も対象になりますか?

有給休暇は必要です。ただし年5日の取得義務のほうは、勤続2年の時点では対象になりません。この2つは別の話なので、分けて考えてください。

有給休暇について。週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下のパート・アルバイトには、日数を按分した「比例付与」が適用されます(労働基準法39条3項)。シフト制などで週の所定労働日数が決まっていない場合は、年間の所定労働日数が216日以下であることが比例付与の要件です。

週3日勤務の場合の付与日数は、次のとおりです。事業場の規模は関係ありません。

勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以降
付与日数 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日

勤続2年であれば、直近の付与は1年6か月時点の6日です。なお、それぞれの付与にあたっては、直前の期間について全労働日の8割以上出勤していることが必要です。

年5日の取得義務について。会社が時季を指定してでも年5日取得させる義務の対象は、その基準日に新たに10日以上が付与される人です(同条7項)。ここは前年からの繰越分を足して10日以上になっても対象にはならない、という点に注意してください。週3日勤務の方が新たに10日以上付与されるのは勤続5年6か月からなので、勤続2年の時点では対象外です。

つまり、有給は与える必要があるが、会社から時季を指定して取らせる義務はまだない、という状態です。本人から時季を指定して請求された場合は、原則としてその時季に与えなければなりません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更できることがあります。

根拠労働基準法39条3項(比例付与) / 労働基準法39条7項(年5日の時季指定義務)

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賃金・割増

祝日に出勤してもらったら、35%増しの割増賃金を払わないといけませんか?

祝日に出勤したというだけで、35%増しが必要になるわけではありません。35%以上の割増が必要なのは、その日が「法定休日」に当たる場合です。

労働基準法35条が使用者に義務づけているのは、毎週少なくとも1回の休日(または4週を通じて4日以上)です。これが法定休日で、この日に働かせたときに35%以上の割増が必要になります(同法37条1項)。国民の祝日を会社の休日にすることは労働基準法上の義務ではないため、祝日が当然に法定休日になるわけではありません。

ただし、就業規則や勤務表でその祝日を法定休日として定めている場合や、実際の休日の与え方からその日が法定休日と評価される場合には、35%以上の割増が必要になります。「祝日だから不要」と機械的に判断しないでください。

日曜定休とのことですが、それだけで日曜日が法定休日になると決まるわけではありません。就業規則で日曜日を法定休日と明確に定めており、その週の日曜に休みが確保されていて、祝日は法定外の休日という位置づけであれば、祝日出勤について35%の割増は原則として不要です。

法定休日を特定していない場合は注意が必要です。週に休日が複数あり、そのすべてに出勤させたようなときは、どれが法定休日労働に当たるかを実際の休日の与え方から判定することになります。行政実務では、就業規則に定めがなければ暦週を日曜日から土曜日までとして扱い、その週の複数の休日に出勤した場合、後順に位置する休日の労働を法定休日労働として扱う考え方があります。後々のトラブルを避けるためにも、就業規則で法定休日を特定しておくことをおすすめします。

時間外の割増も別に発生します。祝日が法定外の休日である場合でも、その勤務によって1日8時間または週40時間を超えた部分には25%以上の割増が必要です。連休中のセールで労働時間が伸びる場面では、ここが実際の負担になります。なお、常時10人未満の商業などには週44時間の特例があり、変形労働時間制を採用している場合も判定が変わります。また、1か月60時間を超える時間外労働には50%以上、深夜(午後10時〜午前5時)の労働には25%以上の割増が加わります。

最後に2点。時間外労働や法定休日労働をさせるには、原則として36協定の締結と届出が必要です。そして、就業規則や雇用契約で法律を上回る休日手当を定めている場合は、その定めに従って支払う必要があります。まずは自社の就業規則がどう定めているかをご確認ください。

根拠労働基準法35条(休日) / 労働基準法37条(割増賃金)

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採用・労働条件

パートを採用するとき、書面で何を渡せばよいですか?ルールが変わったと聞きました。

労働条件通知書(または労働条件を明記した雇用契約書)を渡します。2024年4月から明示すべき項目が追加されているので、古いひな形を使い回している場合は注意が必要です。

書面で明示しなければならない主な事項は、①契約期間、②有期契約なら更新の基準、③就業の場所と従事する業務、④始業・終業時刻、所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇、交替制のルール、⑤賃金の決定・計算・支払方法、締切日と支払日、⑥退職に関する事項(解雇事由を含む)です(労働基準法15条1項、同法施行規則5条)。昇給に関する事項は明示は必要ですが書面でなくても構いません。

2024年4月に追加された項目が3つあります。1つ目は、すべての労働者に対する就業場所・業務の「変更の範囲」の明示です。採用直後の配置だけでなく、契約期間中に変わり得る範囲まで書く必要があります。2つ目は、有期契約における更新上限の有無と内容。3つ目は、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングでの、無期転換の申込機会と転換後の労働条件の明示です。

パートタイム・有期雇用労働者にはこれに加えて、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口の明示が必要です(パートタイム・有期雇用労働法6条、同法施行規則2条)。

実務上の注意点を3つ。1つ目は、明示の方法です。原則は書面の交付ですが、労働者が希望した場合に限り、メールなど出力して書面を作成できる方法での明示も認められます。本人が希望していないのにメールだけで済ませることはできません。2つ目は、就業場所・業務の「変更の範囲」の書き方です。将来のあらゆる可能性を書き並べる必要はなく、契約期間中に通常想定される範囲を記載します。3つ目は、有期契約の更新上限を契約締結後に新たに設けたり短縮したりする場合、その理由をあらかじめ本人に説明する必要があることです。

厚生労働省が労働条件通知書の様式を公開しているので、それをベースに自社の実態を反映させるのが確実です。

根拠労働基準法15条1項(労働条件の明示) / 労働基準法施行規則5条

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就業規則

従業員が10人未満なら就業規則は作らなくていいのでしょうか?

法律上の作成・届出義務はありません。ただし「作らなくてよい」と「作らないほうがよい」は別で、実務上は作成をおすすめします。

就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です(労働基準法89条)。この10人にはパート・アルバイトも含まれます。9人であれば義務はありません。

注意していただきたいのが、この判定が会社単位ではなく事業場単位である点です。2店舗目を出す計画があるとのことですが、原則として店舗ごとに人数を数えます。ただし、場所が分かれていれば必ず別の事業場になるわけではありません。労務管理や指揮監督、業務運営の面で独立性が乏しい場合は、複数の店舗が一つの事業場として扱われることがあります。

また「常時」10人以上というのは、その日その日の在籍人数ではなく通常の使用状態で判断します。繁忙期だけ10人になるのではなく、常態として10人以上であれば義務が生じますし、逆に一時的に9人になる日があっても義務は消えません。

義務がない段階でも作成を勧める最大の理由は、懲戒処分の根拠です。懲戒処分を有効に行うには、原則としてあらかじめ懲戒の種類と事由を定め、労働者に周知しておく必要があります。9人以下であれば法定の就業規則に限られるわけではありませんが、そうした定めが何もないまま処分をすると、根拠を欠いて無効となるリスクが非常に高くなります。休職や服務規律の根拠も同様です。人が増えてから慌てて作るより、9人の今のうちに整えておくほうが、内容も実態に合ったものになります。

根拠労働基準法89条(作成・届出義務)

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社会保険

週22時間のパートから「扶養から外れたくないので社会保険に入りたくない」と言われました。本人の希望で入らないことはできますか?

要件を満たせば、本人の希望で加入しないことは選べません。ただし現時点では、いくつかの前提を確認したうえでですが、加入義務がない可能性が高い状況です。そして2027年10月からは対象になる見込みです。

現時点の判定。パート・アルバイトが社会保険の被保険者になるのは、主に次のいずれかの場合です。

  1. 週の所定労働時間および月の所定労働日数が、同じ事業所で同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である(この場合は会社の規模を問わず加入)
  2. 4分の3未満でも、特定適用事業所(厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上)または任意特定適用事業所に勤務し、週20時間以上・月額賃金8万8,000円以上・2か月を超える雇用見込み・学生でない、のすべてを満たす

週22時間は、通常の労働者が週40時間なら4分の3(30時間)に届かないので1には該当しません。2についても被保険者数42人であれば該当しませんが、2つ確認していただきたい点があります。1つは、法人の場合、企業規模は同一法人番号に属するすべての適用事業所の被保険者数を合算して判定するということです。この事業所だけで42人でも、他の事業所と合わせて51人以上になれば特定適用事業所に該当します。もう1つは、51人未満でも労使の合意により任意特定適用事業所となっている場合があることです。この2点に当たらなければ、現時点では加入義務はありません。

2027年10月から変わります。令和7年法律第74号により企業規模要件が段階的に引き下げられ、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上となり、2035年10月に撤廃されます。被保険者数42人の状態が続けば、2027年10月から特定適用事業所に該当します。

なお、月額8万8,000円以上という賃金要件についても、撤廃が法律上すでに決まっています(厚生労働省は2026年10月の撤廃を予定と案内)。ただし2026年8月時点ではまだこの要件が適用されています。もっとも月収9万円とのことなので、この要件自体は現時点でも満たしています。

そして最も重要な点。社会保険の加入は、要件を満たせば法律上当然に被保険者となるもので、本人の希望や会社との合意で加入しないことは選べません。加入させなかった場合、年金事務所の調査で遡って加入手続きと保険料の納付を求められます。2027年10月が近づいたら、対象になる方に事前に説明し、労働時間の設定を本人と話し合っておくことをおすすめします。

もう1点、混同しやすい論点があります。勤務先の社会保険に加入義務がないことと、配偶者などの健康保険の被扶養者として認定されることは別の話です。被扶養者の認定には、原則として年間収入130万円未満であることや生計維持関係があることなどの要件があり、加入対象外だから当然に扶養にとどまれる、というわけではありません。扶養に入れるかどうかは、配偶者が加入している健康保険の基準で別途判定されますので、そちらもご確認ください。

根拠健康保険法3条1項9号(短時間労働者の適用要件) / 厚生年金保険法12条5号 / 令和7年法律第74号(企業規模要件の段階的引下げ)

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育児・介護

男性社員から産後パパ育休を2回に分けて取りたいと言われました。可能ですか?手続きと給付金も知りたいです。

2回に分けての取得は可能です。ただし申出は初めにまとめて行う必要があるという条件があり、ここを見落とすと2回目が取得できなくなります。

① 分割の可否。産後パパ育休(出生時育児休業)は、原則として子の出生後8週間以内に通算4週間(28日)まで取得できる制度で、2回まで分割できます(育児・介護休業法9条の2)。ただし分割する場合は、初回の申出時に2回分の開始予定日と終了予定日をまとめて申し出る必要があります。1回目を取った後に2回目だけを追加で申し出た場合、会社はその申出を拒むことができます(会社が任意に認めることは可能です)。本人には、この点を必ず伝えてください。

なお、出産予定日と実際の出生日がずれた場合、取得できる期間が調整されます。予定日と出生日の両方を確認してください。

② 会社側の手続きと期限。申出期限は原則として休業開始予定日の2週間前までです。これを2週間より長く、最長1か月前までとすることもできますが、そのためには育児・介護休業法9条の3第4項および同法施行規則21条の7に定める所定の措置を実施したうえで、その内容と申出期限を労使協定に定めておく必要があります。研修や相談窓口を設けているだけで当然に1か月前にできるわけではないので、自社が要件を満たしているかご確認ください。

会社は申出を受けたら、休業の開始予定日・終了予定日などを書面等で速やかに本人に通知します。給付金は通常、会社を経由してハローワークに申請します。社会保険料の免除についても、要件を確認したうえで年金事務所への手続きを行います。

③ 給付金出生時育児休業給付金として、休業開始時賃金日額の**67%**が支給されます(雇用保険法61条の8)。受給には雇用保険の受給資格のほか、休業中の就業日数・時間や賃金額についての要件があります。

さらに出生後休業支援給付金により、最大28日について13%が上乗せされ、合計80%となります(同法61条の10)。ただしこの上乗せには要件があり、男性の場合は原則として、本人が通算14日以上取得し、かつ配偶者も同じ子について所定の期間内に通算14日以上の育児休業を取得していることが必要です。ひとり親である場合や、配偶者が雇用保険の被保険者でない場合など、配偶者の取得を要件としない例外もあります。配偶者の取得予定を必ず確認してください。

給付金には上限額があり、休業中に賃金が支払われた場合は減額または不支給となることがあります。「手取りが変わらない」と説明されることがありますが、これは給付が非課税であることと社会保険料免除を前提とした一般的な目安で、すべての方に当てはまるわけではありません。

社会保険料の免除も、育休を取れば常に受けられるわけではありません。その月の末日を含む休業であること、または同一月内に14日以上取得することなどの要件があります。賞与にかかる保険料の免除には、連続して1か月を超える育児休業であることが必要です。

なお産後パパ育休とは別に、通常の育児休業も2回まで分割して取得できます。両方を組み合わせた取得計画を立てることも可能なので、本人の希望を確認したうえで設計するとよいでしょう。

根拠育児・介護休業法9条の2(出生時育児休業) / 雇用保険法61条の8(出生時育児休業給付金) / 雇用保険法61条の10(出生後休業支援給付金)

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従業員から妊娠の報告がありました。産休はいつから取れて、給与や手当はどうなりますか?育休はいつまでですか?

産前休業は出産予定日を含めて42日前から本人の請求により取得でき、産後は出産日の翌日から8週間が休業期間になります。給与の支払義務はありませんが、健康保険の被保険者本人で要件を満たせば出産手当金が、雇用保険の被保険者で要件を満たせば育児休業給付金が支給されます。

① 産休の期間(労働基準法65条)。産前休業は、出産予定日を含めて6週間(42日)前から、本人が請求した場合に取得できます。多胎妊娠の場合は14週間(出産予定日を含めて98日)前からです。請求がなければ就業させても違法ではありませんが、実務上は本人の希望を早めに確認しておきます。産後休業は、出産日の翌日から8週間は就業させてはならないという強制的なものです。ただし産後6週間を経過した後に本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務については就業させることができます。

なお産前休業は「出産予定日」を基準に始まり、産後休業は「実際の出産日」を基準に数えます。出産が予定日より遅れた場合、その分は産前休業として扱われ、産後8週間は実際の出産日の翌日から数えます。

② 給与と手当。産休中の給与を支払う義務は法律上ありません。無給の場合、健康保険から出産手当金が支給されます(健康保険法102条)。金額は、支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2にあたる額です。対象となるのは産前42日・産後56日のうち労務に服さなかった期間です。ただし健康保険の被保険者期間が12か月に満たない場合は別の計算方法があり、また給与が一部支払われる場合も、その額が出産手当金より少なければ差額が支給されます。なお対象は健康保険の被保険者本人で、国民健康保険の加入者や被扶養者には原則として支給されません。

産休・育休期間中の社会保険料は本人負担・会社負担ともに免除されます(申出が必要)。出産費用については出産育児一時金が別に支給されます。

③ 育休の期間。産後休業が終わった翌日から、原則として子が1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)まで取得できます。保育所に入所できないなどの事情がある場合は1歳6か月まで、さらに事情が続けば最長2歳まで延長できます。育児休業給付金は、休業開始から180日目までは休業開始時賃金日額の67%、それ以降は**50%**です。ただし給付を受けるには、休業開始前2年間に一定の被保険者期間があることなどの要件があり、休業中に賃金が支払われる場合は減額または不支給となることがあります。実際に支給されるかは、個別に確認してください。

あわせてご注意ください。妊娠・出産・産休の請求などを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(男女雇用機会均等法9条3項)。担任配置の調整は当然必要な業務対応ですが、本人の処遇や契約条件を変更する場合は、不利益取扱いに当たらないか慎重に確認してください。

根拠労働基準法65条(産前産後休業) / 健康保険法102条(出産手当金) / 育児・介護休業法5条・雇用保険法61条の7

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ハラスメント

10月からカスハラ対策が義務になると聞きました。何から手を付ければよいですか?

方針の明文化 → 相談窓口の設置 → 対応フローと記録様式の整備、の順です。施行は2026年10月1日なので、残り2か月で最低限ここまでを形にしてください。

改正労働施策総合推進法により、顧客・取引先・施設利用者など第三者の言動によるカスタマーハラスメントについて、事業主に雇用管理上の措置義務が課されます。労働者を1人でも雇用していれば対象で、規模による猶予はありません。

前提として、対象となるのは顧客等の言動のうち、業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものです。正当な苦情や改善の申入れまでカスハラとして扱わないことも、あわせて社内で共有してください。

1. 方針の明確化と周知。「カスハラには毅然と対応し、労働者を守る」という方針を明文化し、社内に周知します。就業規則や防止規程に条文を置く方法が確実ですが、法律上そこまでが必須というわけではなく、社内文書・掲示・研修資料などでも要件を満たし得ます。逆に、規程に1行加えただけで周知していない状態は避けてください。指針は周知・啓発までを含めて措置義務としています。

2. 相談窓口の設置と周知。誰に相談すればよいかを明示します。小規模な事業所では管理者がそのまま窓口になることが多いですが、その場合でも相談記録の様式と保管ルールは決めておくことをおすすめします。口頭で聞くだけの運用では、後日に対応内容や措置義務の履行状況を確認し、説明することが難しくなるためです。あわせて、相談者や事実確認に協力した人のプライバシーを保護すること、そして相談したことを理由に不利益な取扱いをしないことを定め、これを労働者に周知する必要があります。

3. 事後対応フローの決定。どの段階で現場担当者から管理者に引き継ぐか、どこからは組織として対応するかを、事前に線引きしておきます。「利用者さんだから我慢して」という運用が残っていると、措置義務違反と評価されるおそれがあります。事実確認をした後の被害を受けた労働者への配慮、行為者への対応、再発防止措置までを一連の流れとして決めておいてください。相談を受けた時点で、相談者の心身の状況に配慮することも求められます。

訪問介護の場合、利用者本人だけでなくご家族も「顧客等」に含まれるという整理になります。ご相談のような過剰な要求は、まさに今回の措置義務が想定している場面です。詳しい手順は2026年10月カスハラ対策義務化の記事に、規程の条文例はカスハラ防止規程のひな形にまとめています。

根拠改正労働施策総合推進法(2025年6月11日公布・2026年10月1日施行) / 厚生労働省指針(2026年2月26日告示)

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安全衛生

週28時間勤務のパート職員にも、健康診断を受けさせる義務はありますか?

週28時間で通常の職員が週40時間であれば、法律上の実施義務はありませんが、実施することが望ましいという位置づけになります。

健康診断には、採用時に行う雇入時健康診断(労働安全衛生規則43条)と、1年以内ごとに1回行う定期健康診断(同規則44条)があります。ご質問は定期健康診断のことと思われますので、そちらを前提にご説明します。

対象となる「常時使用する労働者」は、次の2つをどちらも満たす短時間労働者とされています(労働安全衛生法66条1項、同規則44条、平成19年10月1日基発第1001016号)。

  1. 期間の定めのない契約、または1年以上使用される予定がある(更新により1年以上使用されている場合を含む)
  2. 1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である

ご相談のケースは契約1年更新なので1つ目は満たしますが、通常職員が週40時間だとすると4分の3は週30時間で、週28時間はこれを下回ります。したがって実施義務はありません。ただし、所定労働時間が通常の労働者のおおむね2分の1以上であれば実施が望ましいとされており、週28時間はこれに該当します。

2点、確認していただきたいことがあります。

1つは、常勤職員の所定労働時間が本当に週40時間かです。週37.5時間なら4分の3は28.125時間となり、週28時間はぎりぎり下回りますが、週36時間なら4分の3は27時間なので義務の対象になります。就業規則で自院の所定労働時間をご確認ください。

もう1つは、この方が深夜業などの特定業務に常時従事していないかです。該当する場合は、配置替えの際および6か月以内ごとに1回の健康診断が必要になることがあります(同規則45条)。ただし、深夜の勤務が一度でもあれば当然に対象になるというものではなく、特定業務に常時従事しているといえるか、雇用期間や通常の労働者との所定労働時間の割合はどうかを個別に判断します。なお、業務内容によっては、一般健康診断とは別に特殊健康診断の対象になる場合もあります。

根拠労働安全衛生法66条1項 / 労働安全衛生規則43条・44条 / 平成19年10月1日基発第1001016号

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労災

従業員が帰宅途中にスーパーへ寄り、店を出た後に転倒して骨折しました。通勤災害になりますか?

夕食の買い物は「日常生活上必要な行為」に当たるため、通勤災害と認められる可能性は十分にあります。ただし結論は、買い物を終えて帰宅のための移動を再開していたといえるかによって分かれます。

原則として、通勤の経路を逸脱したり通勤を中断したりした場合、その間だけでなくその後の移動も通勤としては扱われません(労働者災害補償保険法7条3項)。寄り道をすると、そこから先はすべて通勤ではなくなるのが原則です。

ただし例外があります。日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、逸脱・中断している間を除いて、合理的な経路に復帰した後は再び通勤として扱われます(同項ただし書)。この「日常生活上必要な行為」には日用品の購入その他これに準ずる行為が挙げられており(同法施行規則8条1号)、夕食の買い物はこれに該当します。

買い物をしている最中は、通常は中断中として対象外です。一方、買い物を終えて帰宅のための移動を再開し、合理的な経路に復したといえる段階に入っていれば、通勤として扱われます。

ここで注意していただきたいのは、「店の敷地内か、外か」という場所だけで決まるものではないという点です。店舗の駐車場内であっても、買い物を終えて帰宅行為に戻り合理的な経路に復したと認定された事例があります。施設の構造、移動の方向、事故が起きた地点などから、実質的に判断されます。

ご相談では「店を出て自宅へ向かう途中の歩道」とのことなので、帰宅のための移動を再開した後と評価される可能性は高いといえます。また、法令上問われるのは「合理的な経路」に復したかであり、普段使っている一本の道に完全に戻っている必要はありません。事故地点から自宅までの経路が、買い物を終えた後の帰宅経路として合理的といえるかで判断されます。

なお、通勤経路上の店でごく短時間、日用品を購入するような些細な行為は、そもそも逸脱・中断として扱われない場合もあります。

実務としては、店舗の場所・普段の帰宅経路・転倒した地点の3つを地図上で確認し、本人からの聞き取りとあわせて記録に残してください。最終的な認定は労働基準監督署が行うため、判断に迷う場合でも請求すること自体は可能です。事実関係を整理したうえで、監督署に相談されることをおすすめします。

根拠労働者災害補償保険法7条2項・3項 / 労働者災害補償保険法施行規則8条

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