従業員を初めて雇うときの手続き一覧|労災・雇用保険・社会保険・必要書類を解説
「初めて従業員を雇うが、何の手続きをいつまでにやればいいか分からない」という中小企業・個人事業主向けに、労働条件の明示から社会保険・雇用保険の加入、36協定、就業規則まで、初めての採用で必要な手続きを、ITに強い社労士エンジニアが順番に解説します。
はじめに
「事業が軌道に乗ってきて、初めて従業員を雇うことにした。でも、何の手続きを・どこに・いつまでに出せばいいのか分からない」――初めての採用で、ほとんどの経営者がつまずくポイントです。
人を雇うと、労働基準法・社会保険・雇用保険・税務など、複数の役所にまたがる手続きが一気に発生します。しかも、提出先も期限もバラバラです。抜けがあると、保険給付が受けられなかったり、後から是正を求められたりすることもあります。
本記事では、初めて従業員を雇うときに必要な手続きを、雇う前・入社時・入社後の順に整理します。「まず全体像を把握したい」「自社でやるか、社労士に任せるか判断したい」という段階の方に向けた内容です。
まずは全体像|初めての採用でやることチェックリスト
細かい書類に入る前に、全体像をつかんでおきましょう。初めて従業員を雇うときにやることは、大きく次のとおりです。
| タイミング | やること | 主な提出先 | 期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 雇う前 | 労働条件の明示(労働条件通知書) | 本人へ交付 | 契約締結時・入社前 |
| 雇う前 | 法定三帳簿の準備 | 社内で備付け | 雇入れ時 |
| 入社時 | 労働保険の保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 成立日の翌日から10日以内 |
| 入社時 | 労働保険の概算保険料申告書 | 労働局・労基署など | 成立日の翌日から50日以内 |
| 入社時 | 雇用保険適用事業所設置届(雇用保険の対象者を初めて雇う場合) | ハローワーク | 設置日の翌日から10日以内 |
| 入社時 | 雇用保険被保険者資格取得届 | ハローワーク | 資格取得日の翌月10日まで |
| 入社時 | 社会保険の新規適用届・資格取得届 | 年金事務所 | 事実発生から5日以内 |
| 残業させる前 | 36協定の締結・届出 | 労働基準監督署 | 残業させる前 |
| 10人以上になったら | 就業規則の作成・届出 | 労働基準監督署 | 常時10人以上になったら |
| 給与支払い時 | 源泉徴収・住民税の準備 | 税務署・市区町村/税理士と連携 | 給与支払い前・入社時に確認 |
提出先が「労基署・ハローワーク・年金事務所・税務署」と分かれているのが、初めての方が混乱する最大の理由です。一つずつ見ていきます。
1. 労働条件の明示(労働条件通知書)
人を雇うときは、労働基準法第15条で、賃金・労働時間・休日などの労働条件を書面などで明示することが義務づけられています。これをまとめたのが労働条件通知書です。雇用契約書と兼ねる形でも構いません。
2024年4月からは、明示すべき事項が追加され、**就業場所・業務の「変更の範囲」**なども示す必要があります。古いテンプレートを流用すると、この2024年改正に対応していない可能性があるため注意が必要です。
口頭の約束だけで雇うと、後々「残業代の前提が違う」「契約と話が違う」といったトラブルの火種になります。最初に書面で条件をそろえておくことが、いちばんの予防策です。
2. 法定三帳簿の準備
従業員を雇ったら、実務上「法定三帳簿」と呼ばれる、次の労務管理書類を整備・保存する必要があります。
- 労働者名簿 — 氏名・生年月日・住所・業務の種類など
- 賃金台帳 — 支給額・控除額・労働時間数など
- 出勤簿(タイムカードなど) — 始業・終業時刻、労働日数
紙でも作れますが、後述するクラウド勤怠・給与ソフトを使えば、出勤簿や賃金台帳を効率よく整えやすくなります。最初からデジタルで揃えておくと、人数が増えてからの作り直しがなくなります。
3. 労働保険(労災・雇用保険)の加入
労働者を1人でも雇えば、原則として労災保険の対象になります。また、週20時間以上・31日以上の雇用見込みなどの要件を満たす人を雇う場合は、雇用保険の手続きも必要です。
- 労災保険 — 業務中・通勤中のケガや病気に備える保険。1人でも雇えば原則加入が必要で、保険料は全額会社負担です。初めて雇うときは、労働基準監督署に保険関係成立届を提出します。
- 雇用保険 — 失業給付などの保険。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある人が対象です。ハローワークに適用事業所設置届と被保険者資格取得届を提出します。
労災・雇用保険は提出先が分かれている(労基署とハローワーク)ため、初めてだと前後関係に戸惑いやすい部分です。
4. 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入
健康保険・厚生年金(あわせて社会保険)は、会社の形態によって加入義務の有無が変わります。
- 法人 — 社長1人の会社を含め、1人でも強制加入です。
- 個人事業 — 常時5人以上の従業員がいる場合に強制加入が原則です。ただし、農林水産業・飲食店・理美容業・旅館業など一部の業種は、5人以上でも任意適用となる場合があります。5人未満の個人事業も任意加入の扱いです。
加入する場合は、年金事務所に新規適用届と被保険者資格取得届を提出します。なお、パート・アルバイトの社会保険加入の基準は段階的に拡大しているため、短時間労働者を雇う場合は社会保険の適用拡大と「年収の壁」もあわせて確認してください。
5. 残業させるなら「36協定」
法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて残業や休日労働をさせるには、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。届出をせずに残業させると、それ自体が法違反になります。
初めての採用でも、繁忙期に残業の可能性があるなら、最初に締結しておくのが安全です。書き方や上限規制は36協定の書き方と残業時間の上限規制で詳しく解説しています。
6. 従業員が10人以上になったら「就業規則」
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。10人未満は義務ではありませんが、トラブル予防や採用面で作っておく価値は十分にあります。
詳しくは就業規則の作成・見直しを社労士に依頼するをご覧ください。
7. 税務(源泉徴収・住民税)
給与を払うときは、所得税を源泉徴収して納める必要があります。従業員のマイナンバーを取得・管理し、扶養控除等申告書を提出してもらう、といった準備も必要です。
なお、年末調整や所得税の具体的な取り扱いは税理士の領域です。社労士は給与計算や社会保険の手続きを担当し、税務は税理士と連携して進めるのが一般的です。当事務所でも、給与データの整理までを担当し、年末調整は税理士と連携して対応します。
ITに強い社労士の視点|最初からクラウドで揃える
初めての採用は、最初に仕組みを整える絶好のタイミングです。人数が少ないうちにクラウドで揃えておけば、後から増えても手作業が破綻しません。
- 勤怠 → 給与 → 社会保険をデータでつなぐ — クラウド勤怠で打刻し、給与計算・社会保険手続きまで連携させれば、転記ミスや二重入力がなくなる
- 法定三帳簿が自動でそろう — 出勤簿・賃金台帳がツール上に蓄積され、別途作る手間が消える
- 電子申請で役所に行かない — 社会保険・雇用保険の手続きを e-Gov の電子申請にすれば、窓口待ちゼロで済む
どのツールを選ぶかは中小企業向け労務DXツールの選び方、導入から運用までまとめて任せたい場合は勤怠・給与計算のクラウド化を社労士に外注するを参考にしてください。
自社でやるか、社労士に任せるか
これらの手続きは、調べながら自社でやることもできます。一方で、提出先が4か所に分かれ、期限もあるため、本業の傍らで初めて対応するのは負担が大きいのも事実です。
社労士に任せると、労働・社会保険の手続き代行はもちろん、労働条件通知書や就業規則の整備、クラウド化まで含めて、最初の体制づくりを一気通貫で進められます。「1人目の採用を機に、最初からきちんと整えたい」という会社ほど、相性が良い頼み方です。
「労働条件通知書だけ作ればいいと思っていたら、労働保険・雇用保険・社会保険まで必要だった」というケースは少なくありません。
何から手をつければいいか分からない段階でも問題ありません。まず必要な手続きの全体像と優先順位を整理するところからご一緒します。初回無料相談はこちら。
よくある質問
Q1. アルバイト・パート1人でも手続きは必要ですか?
はい。労災保険は1人でも対象になり、労働条件の明示や三帳簿の備付けも必要です。雇用保険・社会保険は、労働時間や雇用見込みなどの加入基準を満たすかで判断します。
Q2. 手続きはいつまでにやればいいですか?
社会保険は原則として事実発生から5日以内、労働保険の保険関係成立届は成立日の翌日から10日以内、雇用保険の資格取得届は資格取得日の翌月10日までなど、手続きごとに期限が異なります。期限を過ぎると追加書類が必要になったり手続きが煩雑になったりするため、採用が決まった時点で準備を始めるのが安全です。
Q3. 社会保険に入らないといけませんか?
法人であれば社長1人でも原則加入が必要です。個人事業は常時5人以上で原則加入となります(一部業種を除く)。「入りたくない」という理由での未加入は認められていません。
Q4. 顧問契約をしなくても、初回の手続きだけ頼めますか?
はい。初めての採用に伴う手続きや書類整備はスポットでもご依頼いただけます。継続的な給与計算・手続き・相談まで任せたい場合は、顧問契約もご提案できます。詳しくは顧問社労士の選び方と費用相場をご覧ください。
Q5. 地方の会社でも対応できますか?
オンライン対応のため、全国からご相談いただけます。東京・神奈川・埼玉・千葉など首都圏では、必要に応じて対面での打ち合わせも可能です。
まとめ
- 初めて従業員を雇うと、労働条件の明示・三帳簿・労働保険・社会保険・36協定・税務など、複数の役所にまたがる手続きが発生する。
- 提出先は労基署・ハローワーク・年金事務所・税務署に分かれ、期限もあるため、採用が決まった時点で動き出すのが安全。
- 社会保険は法人なら1人でも、個人事業は常時5人以上で原則加入。労災は1人でも対象。
- 最初からクラウドで勤怠・給与・社会保険をつなぐと、人数が増えても手作業が破綻しない。
「初めての採用で、何から手をつければいいか分からない」「最初からきちんと整えたい」――そんな段階でこそ、お役に立てます。初回相談は 30 分無料です。お気軽に お問い合わせ ください。
関連記事
- 顧問社労士の選び方と費用相場 — 採用後の労務を継続的に任せたい方へ。
- 就業規則の作成・見直しを社労士に依頼する — 従業員10人が近づいてきたら。
- 36協定の書き方と残業時間の上限規制 — 残業させる前に必要な手続き。
- 勤怠・給与計算のクラウド化を社労士に外注する — 最初からクラウドで仕組みを整えたい方へ。