カスハラ対応マニュアル雛形|中小企業向けテンプレートと想定問答集(コピペで使える)
2026年10月のカスハラ対策義務化に向けて、中小企業がそのまま使えるカスハラ対応マニュアルの雛形と、電話・対面・メールの想定問答集、対応打ち切りトーク、記録テンプレートを社労士エンジニアが提供します。クレームとカスハラの線引き基準も解説。
はじめに
「カスハラ対策が 2026 年 10 月から義務になるのは分かった。でも、現場が使える"マニュアル"をゼロから作るのは大変…」――そんな中小企業の経営者・人事担当者の方に向けて、本記事は そのままコピーして使えるカスハラ対応マニュアルの雛形 をお届けします。
2026 年 10 月 1 日施行の改正労働施策総合推進法では、事業主に カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の措置義務 が課されます。厚労省指針(2026 年 2 月 26 日告示)は、方針の明確化・相談体制の整備・事案発生時の対応・「抑止のための実効性ある措置」などを求めており、これらを現場で機能させるための有力な手段が 対応マニュアルの整備 と 顧客対応従事者への研修 です。
法改正の全体像(5 つの措置義務・相談窓口・記録管理)は親記事 2026 年 10 月カスハラ対策義務化|中小企業がやるべき相談窓口・規程・記録管理 にまとめています。本記事はその実務編(マニュアル雛形)です。
この記事でわかること
- カスハラ対応マニュアルに盛り込むべき構成(目次の雛形)
- 「正当なクレーム」と「カスハラ」を分ける具体的な線引き基準
- 電話・対面・メール/SNS 別の想定問答集(応対トーク例)
- 対応を打ち切るときの言い回しの雛形
- 対応記録テンプレート(コピペ可)
- 生成 AI でマニュアルのたたき台を作るときの注意点
📝 テンプレート利用にあたって 本記事の雛形は一般的なひな形です。業種・商材・顧客接点(対面/電話/EC など)によって最適な基準は変わります。実際の運用に乗せる前に、社労士・弁護士など専門家の確認を受けることをおすすめします。
なぜ「マニュアル」が義務対応の中心になるのか
指針が求める措置のうち、「方針の明確化」「相談窓口」「事後対応」は、規程や窓口の整備で形になります。一方、現場の従業員を実際に守るのは、その場で何をどこまでやるかを示したマニュアル です。
指針は「抑止のための実効性ある措置」として、おおむね次を例示しています。
- 複数名対応・通話録音・チャット履歴の保存
- マニュアル整備(正当なクレームとカスハラの線引き、対応打ち切りの基準)
- 顧客への事前告知(録音の告知、悪質な言動への対応をお断りする旨)
- 顧客対応従事者への研修(断り方・エスカレーション基準)
つまり、マニュアル整備それ自体が独立した法律上の義務というわけではありませんが、措置義務を実効的に果たすうえで欠かせない有力な手段 という位置づけです。現場が迷わず動けるマニュアルを 1 本作っておけば、研修教材にもエビデンスにもなります。
マニュアルの構成(目次の雛形)
まずは全体像です。以下をベースに、自社で不要な章を削るところから始めると早く作れます。
カスタマーハラスメント対応マニュアル
1. 目的(従業員を守るための方針であること)
2. カスハラの定義と判断基準
2-1. カスハラの3要素
2-2. 正当なクレームとの線引き
2-3. カスハラに該当する行為の具体例
3. 基本対応の流れ(一次対応 → エスカレーション → 打ち切り)
4. 場面別の応対方法(電話/対面/メール・SNS)
5. 対応を打ち切る基準とトーク例
6. 緊急時の対応(暴力・脅迫・居座り → 警察通報の基準)
7. 対応後の記録と報告(記録テンプレート・提出先)
8. 相談窓口・支援体制(被害を受けた従業員のケア)
9. 改訂履歴
⚠️ 「対応打ち切り=何でも拒否」ではありません マニュアルの目的は、正当なクレームには誠実に対応しつつ、社会通念上相当な範囲を超えた言動には毅然と対応する ことです。線引きを曖昧にしたまま「面倒な客は切る」運用にすると、正当なクレーム対応を怠ったと評価されるリスクがあります。2 章の線引き基準を必ず定義してください。
2 章の雛形:カスハラの定義と線引き基準
カスハラの 3 要素(指針ベース)
次の3要素をすべて満たす場合、カスハラとして本マニュアルの対応をとる。
(1) 顧客等(取引先・施設利用者・患者や利用者の家族等を含む)の言動であること
(2) その言動が社会通念上相当な範囲を超えていること
(3) その言動により従業員の就業環境が害されること
正当なクレームとカスハラの線引き
現場が最も迷うのがここです。「要求の内容」と「要求の手段・態様」の 2 軸で見ると判断しやすくなります。
| 観点 | 正当なクレーム(誠実に対応) | カスハラの疑い(毅然と対応) |
|---|---|---|
| 要求の内容 | 商品・サービスの不備の是正、合理的な範囲の補償 | 法外な金銭要求、土下座・私的謝罪、不可能な要求 |
| 言動の態様 | 通常の言葉づかい・常識的な回数/時間 | 暴言・侮辱・脅迫、長時間拘束、執拗な架電・来訪 |
| 対象 | 商品・対応そのものへの指摘 | 従業員個人の人格・容姿・属性への攻撃、SNS 晒し |
⚠️ 「内容が正当でも手段が過剰」ならカスハラになり得ます 要求自体は正当でも、暴言・長時間拘束・人格攻撃を伴えば、その手段・態様の部分はカスハラとして扱えます。「要求内容が正しいかどうか」と「やり方が許されるか」を分けて判断するのがコツです。
カスハラに該当しうる行為の具体例
・暴言、侮辱、人格否定、大声での威圧
・暴力、物を投げる・壊す、土下座の強要
・脅迫(「SNSにあげる」「会社に乗り込む」等)
・長時間の拘束、同じ要求の執拗な繰り返し
・正当な理由のない金銭・私的謝罪・対応者の処分要求
・従業員個人への付きまとい、私生活への干渉、SNSでの中傷
4 章の雛形:場面別の想定問答集
実際の応対トークの例です。「共感 → 事実確認 → 範囲提示 → 線を越えたら打ち切り予告」 の流れを基本形にしています。
電話対応
【一次対応:まず傾聴と事実確認】
「ご不便をおかけし申し訳ございません。状況を正確に確認したいので、
差し支えなければ順にお聞かせいただけますか。」
※冒頭で「品質向上のため通話を録音しております」と告知
【過大要求が出たとき】
「ご要望は承りました。ただ、〇〇については当社の規定上お受けいたしかねます。
お力になれる範囲としては△△をご案内できます。」
【暴言・人格攻撃が始まったとき(打ち切り予告)】
「恐れ入りますが、その表現にはお答えいたしかねます。
冷静にお話しいただけない場合は、いったんお電話を終了させていただきます。」
【打ち切り】
「申し訳ございませんが、これ以上は対応いたしかねますので、
本日のお電話はここで終了させていただきます。失礼いたします。」
対面対応
【基本】
・一人で抱え込まず、長引く場合は責任者が同席(複数名対応)
・記録のため「メモを取らせていただきます」と一言告げる
【居座り・大声のとき】
「他のお客様のご迷惑になりますので、別室(または後日)で承ります。」
【暴力・物損・脅迫の兆候があるとき】
→ ただちに責任者に引き継ぎ、危険があれば110番。
従業員の安全を最優先し、無理に対応を続けさせない。
メール・SNS・チャット対応
【基本方針】
・即レス・即決をしない(「確認のうえ改めてご連絡します」で一拍置く)
・暴言や脅迫を含む文面は、削除せず証跡として保存する
【過度な連投・脅迫文面への返信例】
「いただいたご連絡は確認いたしました。
当社の対応方針に沿ってご回答済みのため、同一内容のご連絡には
個別の返信を差し控えさせていただく場合がございます。」
💡 エスカレーション基準を数値で決めておく 「暴言が出たら」「同じ要求が 3 回繰り返されたら」「対応が 30 分を超えたら」責任者に引き継ぐ、というように トリガーを具体的な数値・条件で 決めておくと、現場担当者が"自分の判断で我慢し続ける"事態を防げます。
5・6 章の雛形:打ち切り基準と緊急対応
【対応を打ち切ってよい基準】
次のいずれかに該当したら、担当者の判断で打ち切り予告→終了してよい。
・暴言・侮辱・人格攻撃が続く
・打ち切り予告後も同じ言動が改まらない
・法外な要求・不可能な要求を撤回しない
・長時間(例:対面/電話とも目安30分超)膠着している
【緊急対応(暴力・脅迫・居座り)】
1. 従業員の身の安全を最優先(その場を離れてよい)
2. 責任者へ即時連絡
3. 危険・犯罪行為(暴行・脅迫・不退去)があれば110番
4. 録音・録画・メモで証拠を確保
※判断に迷う場合でも、従業員の身の危険があるときは、
責任者の判断を待たず安全確保を優先する。
7 章の雛形:対応記録テンプレート
事後対応と措置義務の履行を証明する要になります。Excel・kintone・Notion などに同じ項目を持たせれば、そのまま管理台帳になります。
■カスハラ対応記録
発生日時:2026/ / :
対応者:
顧客情報(特定できる範囲):
チャネル:電話/対面/メール/SNS/その他
事案の概要(言動の内容):
要求内容:
カスハラ判断:該当/非該当(理由: )
とった対応:傾聴/範囲提示/打ち切り予告/打ち切り/警察通報/その他
エスカレーション:有(引継先: )/無
証拠の有無:通話録音/メール/チャット保存/防犯カメラ/メモ
被害従業員へのケア:業務分担見直し/休暇/面談/なし
再発防止メモ:
報告先・共有範囲:
⚠️ 記録の共有はプライバシーと利用目的に注意 顧客情報・従業員の相談内容を社内共有する場合は、共有範囲・保存期間・アクセス権限 を限定し、個人情報保護法上の 利用目的の特定 を済ませてください。「再発防止と従業員保護のため」といった目的を明確にしておくと安全です。
IT に強い社労士のヒント:たたき台作成と運用の省力化
マニュアルは「作って終わり」ではなく、現場が引けて・更新できる 状態が大事です。ここは IT で大きく楽になります。
- 生成 AI でたたき台を一気に作る — 厚労省指針と自社の業種・商材・顧客接点を読み込ませ、本記事の目次に沿って初稿を生成。たたき台作成は数十分で済みます。ただし、線引き基準や打ち切り基準は法的判断を含むため、最終チェックは社労士・弁護士など専門家が必須。AI 出力を無検証で運用に乗せるのは避けてください。
- 想定問答を社内ナレッジ化 — Notion や kintone の FAQ アプリに「場面 × トーク例」を登録し、現場が検索して引ける形にする。新たな事案が出るたび追記すれば、生きたマニュアルになります。
- 記録テンプレートをフォーム化 — Google フォーム/kintone/Microsoft Forms で 7 章の記録項目を入力フォーム化。集計すれば「どのチャネルで・どんなカスハラが多いか」が見え、研修テーマの優先順位づけに使えます。
- 通話録音 + AI 文字起こし — Zoom Phone・Dialpad・MiiTel などはエビデンス保全と研修教材を兼用できます。新人研修で実例(匿名化)を共有すると、トーク例が定着します。
「現場が引けて、更新でき、記録が残る」――この 3 つが揃って初めて、マニュアルは措置義務の証明力を持ちます。
よくある質問
Q1. マニュアルは就業規則のように届け出が必要ですか?
いいえ、カスハラ対応マニュアル自体に行政への届出義務はありません。ただし、カスハラ防止の方針は、就業規則・ハラスメント防止規程・社内掲示・社内ポータルなど、自社に合った方法で明確化し、従業員に周知する必要があります。マニュアルはその方針を現場で運用するための内部文書、という位置づけです。
Q2. 正当なクレームまで「カスハラ扱い」して断ってよいのですか?
いけません。マニュアルの目的は、正当なクレームには誠実に対応しつつ、社会通念上相当な範囲を超えた言動に毅然と対応する ことです。要求の「内容」と「手段・態様」を分けて判断する基準(本記事の線引き表)を必ず盛り込んでください。
Q3. 小規模でマニュアルを細かく作る余裕がありません。最低限どこから?
最低限、(1) カスハラの線引き基準、(2) 打ち切りの基準とトーク例、(3) 記録テンプレート の 3 点があれば運用を始められます。本記事の該当セクションをコピーし、自社の業種に合わせて具体例を 2〜3 個足すところから始めましょう。
Q4. 通話録音は顧客に無断でしてもいいですか?
自社が通話の当事者である場合の録音は、直ちに違法とされるとは限りません。ただし、トラブル防止・抑止効果・社内運用の透明性の観点から、冒頭で 「品質向上および対応内容確認のため録音しております」と告知する 運用がおすすめです。指針も顧客への事前告知を抑止措置の例として挙げています。
Q5. 作ったマニュアルはどのくらいの頻度で見直すべき?
決まりはありませんが、新しい事案が出たとき と 年 1 回程度の定期見直し を目安に。記録テンプレートに溜まった事案を棚卸しし、想定問答に追記していくのが現実的です。
まとめ:明日からやる 3 つのアクション
- 目次の雛形をコピーし、自社で不要な章を削る(まず骨格を確定)
- 線引き基準・打ち切り基準・記録テンプレートの 3 点を埋める(最優先 3 点)
- 想定問答を 1 回の研修で現場に共有し、録音・記録の運用を開始する
カスハラ対応マニュアルは「義務だから作る書類」ではなく、従業員を顧客の理不尽から守る盾 です。現場が迷わず動けるマニュアルがあれば、離職防止にも、対応品質の安定にもつながります。
こんなご相談を承っています
- 「自社の業種に合わせたカスハラ対応マニュアルを作りたい」
- 「想定問答集・打ち切りトークを現場向けに整えたい」
- 「Slack・kintone でカスハラ相談と対応記録の仕組みを作りたい」
- 「就業規則・ハラスメント防止規程へのカスハラ条項の追加を相談したい」
デジタル労務ラボでは、規程整備・マニュアル作成・IT を活用した記録管理・従業員研修 までを社労士エンジニアの視点でワンストップ支援しています。お気軽に 初回無料相談 をご活用ください。
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参考リンク