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カスハラ対策義務化まで残り3ヶ月|中小企業の逆算準備スケジュールと進捗チェックリスト

2026年10月1日のカスハラ対策義務化まで残り約3ヶ月。中小企業が7月・8月・9月に何を整備すればよいかを月ごとの逆算スケジュールに落とし、進捗チェックリスト付きで解説します。規程・マニュアル・相談窓口・研修の各ひな形記事への案内つき。

#カスハラ#ハラスメント対策#中小企業#労務管理#法改正

はじめに

2026年10月1日のカスタマーハラスメント(カスハラ)対策義務化まで、残りおよそ3ヶ月になりました。

「やらなければいけないのは知っているが、まだ何も手を付けていない」――7月時点でこの状態の中小企業は、実際のところ少なくありません。先に結論を言うと、今から始めても十分間に合います。ただし、施行直前の9月にまとめて片付けようとすると、規程・マニュアル・窓口・研修が全部積み重なって現場が回らなくなります。

そこで本記事では、「7月=方針と規程」「8月=マニュアルと相談窓口」「9月=研修・周知と記録」という月ごとの逆算スケジュールに整理し、最後に進捗チェックリストを付けました。各ステップには、そのまま使えるひな形記事へのリンクを置いています。この記事を起点に、自社の進み具合に合わせて必要なページだけ読んでいただく使い方を想定しています。

前提の確認|10月1日に何が義務になるのか

2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法により、すべての事業主(企業規模を問わず)に、カスハラから労働者を守るための雇用管理上の措置が義務づけられます。求められる措置は、実務上、大きく次の3つの場面に整理できます。

  1. 事前の準備
    • 事業主の方針の明確化と労働者への周知・啓発
    • カスハラの内容や対処方法の周知
    • 相談窓口と対応体制の整備
  2. 発生後の対応
    • 事実関係の確認
    • 被害を受けた労働者への配慮
    • 再発防止措置、悪質な事案への対処
  3. 相談者を守る仕組み
    • プライバシーの保護
    • 相談等を理由とする不利益取扱いの禁止

厚生労働省の指針では、これらがさらに具体的な措置として示されています。本記事の逆算スケジュールは、この全体を3ヶ月に配分したものです。

なお、顧客からの苦情や要望がすべてカスハラになるわけではありません。商品・サービスに問題がある場合の正当な申入れまで一律に拒絶するのではなく、要求内容や言動の手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えているかを個別に判断する必要があります。

違反に対する直接の罰則はありませんが、労働局による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表の可能性があります。制度の全体像はカスハラ対策義務化の解説記事で詳しく整理しているので、初めての方はそちらから読むのが早道です。

なお、ここに書いた内容は施行前時点の指針等に基づく原則論です。業種別の細かい取り扱いには例外がありえますので、判断に迷うケースは最新の情報や専門家の確認を挟んでください。

逆算スケジュール|月ごとに1テーマずつ片付ける

7月(残り3ヶ月):方針と規程を固める

すべての土台は**「会社としてカスハラに毅然と対応し、従業員を守る」という方針の明文化**です。ここが決まらないと、マニュアルも研修も書きようがありません。

  • 基本方針(トップメッセージ)を1枚にまとめる
  • カスハラ防止規程を作る(就業規則本体に入れるか、独立規程にするかの判断を含む)

なお、法律上、必ず独立した名称の「カスハラ防止規程」を作らなければならないわけではありません。就業規則、ハラスメント規程、社内方針、対応マニュアルなどを組み合わせ、必要な方針や対処内容が明確化・周知されていることが重要です。

条文ひな形と「就業規則に書くか独立規程か」の判断基準は、カスハラ防止規程のひな形記事にまとめています。ひな形をたたき台にすればゼロから作成するより大幅に時間を短縮でき、小規模な会社であれば数時間程度で初稿を作成できるケースもあります。

8月(残り2ヶ月):対応マニュアルと相談窓口を作る

方針が決まったら、次は現場が実際に動くための道具です。

  • 対応マニュアル:カスハラの線引き基準、場面別の想定問答、対応打ち切りの基準、記録テンプレートまで。目次のひな形と各章の書き方はカスハラ対応マニュアルひな形の記事へ。
  • 相談窓口:専任担当者を置くことまでは求められておらず、中小企業では総務担当者などが兼任する方法も考えられます。既存のパワハラ・セクハラ窓口との一体運用も可能です。ただし窓口を「指定しただけ」では足りず、担当者が適切に対応できるよう、対応手順や情報共有先を決めておく必要があります。設置3ステップと社内周知の文例は相談窓口の作り方の記事へ。

この2つは同時並行で進められます。窓口の担当者指定自体は比較的短期間で進めやすいため、8月の実働の中心はマニュアル作りになります。

9月(残り1ヶ月):研修・周知と記録の仕組みで仕上げる

規程やマニュアルは、作っただけでは「周知・啓発した」とは言いにくいのが実務上の注意点です。9月は「従業員に伝わっている状態」を作り、その証拠を残す月です。

  • 30〜45分の社内研修を実施する(進行例と伝えるべき5項目はカスハラ研修のやり方の記事へ)
  • 実施記録(実施日・参加者・使用資料)を保存する
  • 対応記録の様式を現場に配り、保管ルールを決める

ここまで終えておけば、10月1日を慌てずに迎えられます。

進捗チェックリスト

自社の現在地の確認にお使いください。上から順に埋めていけば、そのまま逆算スケジュールになります。

# 項目 目安時期
1 義務化で求められる措置の全体像を経営層が把握している 7月
2 基本方針(トップメッセージ)を明文化した 7月
3 カスハラへの方針・対処内容を規程や社内方針などで明確化した 7月
4 対応マニュアル(線引き基準・想定問答・打ち切り基準)を作成した 8月
5 事実確認・再発防止に使用する対応記録のテンプレートを用意した 8月
6 相談窓口の担当者を指定した(兼任可) 8月
7 窓口の連絡先と利用方法を社内に周知した 8月
8 相談窓口担当者向けの対応手順・報告先を決めた 8月
9 警察への通報、退去要請、対応打ち切りなど悪質事案への対処方針を決めた 8月
10 従業員向け研修(30分〜)を実施した 9月
11 研修の実施記録(日時・参加者・資料)を保存した 9月
12 相談者のプライバシー保護と不利益取扱い禁止を規程・研修に盛り込んだ 9月

出遅れた場合の優先順位|まず今週着手する3項目

「9月に入ってから着手する」ことになった場合は、まず次の3つから始めてください。

  1. 方針の明文化と周知(1枚のトップメッセージを全員に配る)
  2. 相談窓口の指定と周知(兼任でよいので「誰に言えばいいか」を明確に)
  3. 現場での対処方針と対応記録の整備(起きたことを残せる状態にしておく)

ただし、この3項目だけで措置義務をすべて満たすわけではありません。並行して、相談窓口担当者が適切に対応できる体制、被害者への配慮、再発防止、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止、悪質な事案への対処方針についても、施行日までに整備を進める必要があります。すべてを一度に完成させるのが難しい場合でも、未着手のままにするのではなく、優先順位を付けて順次整備していくことが重要です。

よくある質問

Q1. 10月1日に間に合わなかったら、すぐ罰則がありますか?

直接の罰則はありません。ただし労働局の助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表の可能性があります。また、カスハラ被害を放置して従業員に損害が生じた場合、安全配慮義務違反として民事上の責任を問われるリスクは施行前から存在します。

Q2. 従業員数人の小さな会社でも、全部やる必要がありますか?

措置義務自体は企業規模を問わず適用されます。ただし、体制の「規模」は会社の実態に応じたもので構いません。窓口は兼任1〜2名でも運用できますし、研修も必ずしも大規模な集合研修である必要はなく、少人数の会社であれば朝礼や社内ミーティングの時間を活用する方法もあります。重要なのは、カスハラの判断基準、相談先、現場での対処方法、不利益取扱いの禁止などが従業員に伝わる内容になっていることです。

Q3. ひな形はどこから入手できますか?

本記事からリンクしている各記事(規程マニュアル窓口周知文研修進行例)にそれぞれ掲載しています。まとめて手元に置きたい方向けのセットも用意しています(本ページ下部の案内をご覧ください)。

まとめ:まず今週は「方針1枚」から始める

  • 2026年10月1日から、全事業主にカスハラ対策の措置が義務化される
  • 逆算すると 7月=方針・規程、8月=マニュアル・窓口、9月=研修・記録 の3ステップ
  • 出遅れても「方針・窓口・記録」から着手し、残りの措置も優先順位を付けて順次整備する

3ヶ月と聞くと短く感じますが、月に1テーマずつなら無理のない分量です。まずは今週、基本方針の1枚から着手してみてください。自社だけで進めるのが不安な場合や、規程・マニュアルのレビューが必要な場合は、お問い合わせからご相談いただけます。