カスハラ研修のやり方|中小企業向けに30分の進行例と伝えるべき5項目を解説
2026年10月のカスハラ対策義務化に向けて、中小企業が自社でできるカスハラ研修の進め方を解説。伝えるべき5項目、30〜45分の進行例、実施記録の残し方まで、ITに強い社労士エンジニアが整理します。
はじめに
「カスハラの基本方針も規程も作った。次は従業員への研修と言われたが、何をどう話せばいいのか分からない」――2026年10月の義務化を前に、方針・規程の整備を終えた会社が、次につまずくのがこの研修です。
2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法では、事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の措置義務が課されます。その措置の出発点が**「事業主の方針の明確化と、労働者への周知・啓発」です。つまり、方針や規程を作るだけでは足りず、従業員に伝わっている状態**まで持っていく必要があります。その最も確実な手段が研修です。
とはいえ、外部講師を呼んで半日がかりの研修をする必要はありません。まずは30〜45分の社内研修でも、周知・啓発の第一歩として十分に形になります。本記事では、研修で伝えるべき5つの内容と、そのまま使える30〜45分の進行例、実施記録の残し方、よくある間違いまでを、ITに強い社労士エンジニアの視点で整理します。
方針・規程がまだの会社は、先にカスハラ防止規程のひな形とカスハラ対応マニュアル雛形から着手してください。本記事はその「周知・研修」編です。
なぜ研修までやっておくべきか|「作った」と「伝わった」は別物
カスハラ対策でまず重要になるのは、カスハラに毅然と対応し労働者を守るという方針を明確にし、労働者に周知・啓発することです。
ここで大事なのは、規程を作ってイントラや掲示板に置いただけでは、「周知・啓発した」とは言いにくいという点です。後から労働局などに対応状況を確認されたとき、「いつ・誰に・何を使って周知・研修したか」の記録があるかどうかで、会社の対応の説得力は大きく変わります。
- 規程の整備 — 会社としてのルールを作る(→ 規程のひな形)
- 研修の実施 — ルールを従業員が「知っていて、使える」状態にする(本記事)
- 記録の保存 — 実施した事実を証拠として残す(実施日・参加者・使用資料)
この3点セットで、はじめて「措置を講じた」と胸を張れる状態になります。
研修で伝えるべき5つの内容
内容は難しくありません。次の5つを、自社の言葉で伝えれば十分です。
① 会社の姿勢(なぜカスハラ対策をするのか)
最初に伝えるべきは知識ではなく、「会社はあなたたちを守る」という宣言です。「お客様は大切。でも、理不尽な要求や暴言にまで耐える必要はない。そのときは会社が対応する」――この一言が、研修全体の土台になります。基本方針(トップメッセージ)を代表者の名前で読み上げるのが効果的です。
② カスハラの定義と、正当なクレームとの線引き
従業員が現場で一番迷うのがここです。ポイントは**「要求の内容」と「要求の手段・態様」を分けて見る**こと。
- 商品の不備への指摘・常識的な範囲の要望 → 正当なクレーム(誠実に対応)
- 内容は正当でも、暴言・長時間拘束・執拗な繰り返しなど手段が過剰 → その部分はカスハラとして扱う
自社の業種で実際に起こりそうな例を2〜3個用意し、「これはどっち?」と参加者に考えてもらうと、ぐっと自分ごとになります。
③ 対応の3原則
現場の従業員に覚えてもらうのは、突き詰めればこの3つだけです。
- 一人で抱えない(すぐ上長・責任者を呼ぶ)
- その場で安請け合いしない(過剰な要求をその場の判断で受け入れない)
- 必ず記録する(日時・言動・状況)
④ 対応の流れとエスカレーション基準
「暴言が出たら」「同じ要求が3回繰り返されたら」「対応が30分を超えたら」責任者に引き継ぐ――という具体的な基準を示します。基準が数字で決まっていると、現場は迷いません。対応フローチャートを配布し、詳細は対応マニュアルを参照する形で十分です。
⑤ 相談窓口の案内
最後に、相談窓口の担当者と連絡方法、そして**「相談しても不利益な扱いは一切ない」**ことを必ず伝えます。窓口の存在が知られていなければ、設置していないのと同じです。
30〜45分でできる進行例(タイムテーブル)
| 時間 | 内容 | 使うもの |
|---|---|---|
| 0:00〜0:05 | 代表者から:会社の姿勢の宣言(①) | 基本方針 |
| 0:05〜0:15 | カスハラの定義と線引き+自社の想定例で○×演習(②) | 規程・業種別の例 |
| 0:15〜0:25 | 対応の3原則と対応フロー(③④) | フローチャート・マニュアル |
| 0:25〜0:30 | 相談窓口の案内と質疑(⑤) | 窓口案内 |
| (+15分) | 余裕があれば:ロールプレイ(電話・対面の打ち切りトーク練習) | マニュアルの想定問答 |
- 対象はパート・アルバイトを含む全員。顧客と接する人が最優先ですが、電話を取る可能性がある人まで含めるのが安全です。
- 一度に集まれない場合は、部署ごと・シフトごとの分割開催や、録画した動画の視聴+確認テストでも構いません。大事なのは「全員に届いた」状態を作ることです。
研修資料は、凝ったスライドである必要はありません。たとえば、次の5枚程度でも十分です。
- 会社の基本方針(トップメッセージ)
- カスハラの定義と、正当なクレームとの違い
- 自社の現場で起こりそうな具体例
- 対応の3原則とエスカレーション基準
- 相談窓口と記録の方法
確認テストも、難しいものである必要はありません。「暴言があった場合は一人で対応を続けず、上長に報告する。○か×か」「正当なクレームであれば、長時間拘束されても最後まで一人で対応する。○か×か」という程度でも、受講記録と理解確認を兼ねられます。
実施記録の残し方
研修は「やった証拠」までがワンセットです。最低限、次を記録して保存してください。
- 実施日時・所要時間
- 参加者名簿(欠席者と、欠席者へのフォロー方法も)
- 使用した資料(研修資料・配布物を添付またはファイル保存)
- 実施者(社内の担当者名、外部講師なら講師名)
議事録のような立派なものは不要です。A4一枚のメモと出席簿で十分。「作った・配った・話した・記録した」の一連の流れが残っていることが重要です。
カスハラ研修でよくある間違い
- 正社員だけに実施する(パート・アルバイトこそ最前線。全員が対象)
- 資料を配って「読んでおいて」で終わらせる(周知・啓発とは言いにくい。短くても対面か動画で)
- 1回やって終わり(新入社員・中途入社者への実施漏れが起きやすい。入社時の定例メニューに組み込む)
- 記録を残さない(実施の事実を後から証明できない)
- 一般論だけで自社の例がない(「うちの店で先月あった、あの電話」のような実例が一番伝わる)
なお、同じ2026年10月には就活セクハラ(求職者等へのセクハラ)対策も義務化されます。採用面接に関わる担当者がいる会社は、カスハラ研修とあわせて触れておくと一度で済みます。
ITに強い社労士の視点|研修を「仕組み」にする
カスハラ研修で本当に大変なのは、初回ではなく継続です。入社のたびに同じ説明を繰り返し、実施記録を管理し続ける――ここは仕組み化と相性が良い部分です。
- 研修の動画化 — 初回研修を録画しておき、以後の入社者はオンボーディングで視聴+理解度チェック。実施のムラがなくなる。
- 受講記録のデータ管理 — 誰がいつ受講したかをスプレッドシートや労務システムで管理。行政から確認があった際にも即応できる。
- 想定問答の自社カスタマイズ — 生成AIを使えば、自社の業種・実際にあった事案をもとにした想定問答やケース演習を短時間で作れます(もちろん、内容の最終確認は専門家が行う前提です)。
当事務所は、ITエンジニアとして業務システム開発に携わってきた社労士が運営しているため、規程・研修資料の整備から、受講管理・労務手続きのクラウド化までをセットで設計できます。「10月までに、研修まで一気に終わらせたい」という会社と相性のよい頼み方です。
よくある質問
Q1. カスハラ研修は法律上の義務ですか?
2026年10月施行の改正法で義務づけられるのは「方針の明確化と労働者への周知・啓発」等の措置です。研修という形式そのものが条文で強制されるわけではありませんが、周知・啓発を確実に行い、その事実を残す手段として、研修の実施が最も現実的で確実です。
Q2. どのくらいの時間・頻度でやればいいですか?
まずは30〜45分の全体研修を1回、義務化前(〜2026年9月)に実施するのがおすすめです。その後は、新しく入社した人への実施(入社時研修への組み込み)と、年1回程度の振り返りができれば十分実用的です。
Q3. パート・アルバイトにも必要ですか?
必要です。店頭・電話など顧客との接点の最前線に立つのは、むしろパート・アルバイトであることが多いためです。シフトの都合で集合が難しければ、動画視聴+確認テストなどの方法で構いません。
Q4. 研修資料は自社で作らないといけませんか?
ゼロから作る必要はありません。本記事の5項目と進行例をベースに、自社の業種の具体例を差し替えれば十分です。当サイトでも、研修資料を含む「カスハラ対策スターターキット」(無料)を配布しています(この記事の下部からダウンロードできます)。
Q5. 研修だけ、外部に頼むことはできますか?
はい。規程整備は済んでいて研修だけ実施したい、というご依頼も可能です。自社の規程・実情に合わせた資料調整と実施、記録の整備までまとめてご支援できます。
まとめ
- 2026年10月のカスハラ対策義務化では、方針を「作る」だけでなく従業員に「周知・啓発」するところまでが求められる。その最も確実な手段が研修。
- 伝えるべきは ①会社の姿勢 ②定義と線引き ③対応の3原則 ④対応フローと基準 ⑤相談窓口 の5つ。30〜45分の社内研修で形になる。
- 対象はパート・アルバイトを含む全員。分割開催や動画視聴でもよい。
- 実施日・参加者・使用資料の記録までがワンセット。「作った・配った・話した・記録した」を残す。
- ITに強い社労士なら、研修の動画化・受講記録の管理・規程整備までをセットで仕組み化できる。
「規程は作ったが、従業員への説明まで手が回らない」「自社の業種に合った研修資料・想定問答を作りたい」「研修の実施記録までまとめて整えたい」――そんな段階でこそ、お役に立てます。初回相談は30分無料です。お気軽に お問い合わせ ください。料金は サービス・料金ページ にまとめています。
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