·28 分で読了

【2026年10月施行】同一労働同一賃金のルール改正|「待遇差の説明を求めることができる」明示が義務に(対応セット無料配布)

2026年10月1日から、パート・有期雇用労働者の雇い入れ時(契約更新時を含む)に「正社員との待遇差の内容・理由等について説明を求めることができる」旨の明示が義務化され、同一労働同一賃金ガイドラインでは賞与・退職金・家族手当など8つの待遇の記載が追加・充実されます。改正の3つのポイントと会社が今から準備すべきことを、労働条件通知書の追記文例・待遇差説明シート付きでITに強い社労士が整理します。

#同一労働同一賃金#パート#有期雇用#法改正#労務管理

はじめに|2026年10月1日から、パート・有期雇用のルールが主に3つの分野で変わります

パートタイマーや契約社員を雇用している会社に、この10月、実務に直結する改正が施行されます。なお本記事では、法令上の比較対象である「通常の労働者」(いわゆる正社員等。職務内容などに応じて選定され、社内で正社員と呼ぶ全員が常に比較対象になるわけではありません)を、以下「正社員」と表記します。2026年(令和8年)10月1日から、パートタイム・有期雇用労働法の関係法令が改正されます。改正は大きく次の3つの分野に分かれます(本記事は実務への影響が特に大きい事項を中心にした整理で、改正事項がこの3項目だけというわけではありません)。

  1. 雇い入れ時の明示事項が増える — 「正社員との待遇の違いについて説明を求めることができる」旨を、雇い入れ時に文書などで明示しなければならなくなります
  2. 同一労働同一賃金ガイドラインに具体例が追加される — 賞与・退職金・家族手当・住宅手当など8つの待遇について、問題となる例などの記載が追加・充実されます
  3. 説明の方法などの留意点が指針に加わる — 資料を使って説明し、使った資料を渡すことが望ましいことなどが明記されます

「同一労働同一賃金なら数年前に対応した」という会社こそ、注意が必要です。求めに応じて待遇差を説明する義務自体は従来からありますが、今回の改正では、その権利を労働者本人に告知することが義務になり、説明のしかたも具体化されます。つまり、「求められたら説明できる状態」を実際に用意しておくことが、従来以上に強く求められるようになります(説明資料の事前整備そのものが新たな法定義務になるわけではありませんが、後述のとおり、準備なしで適切な説明義務の履行は難しくなります)。本記事では、改正の中身と、会社が今から準備すべきことを整理します。

同一労働同一賃金 対応セット(無料) — 10月以降の雇い入れ書面に足す労働条件通知書の追記文例、説明を求められたときに開く待遇差説明シート、理由が書けない差が見つかったときの**就業規則の見直し箇所チェック(パート・有期)**の3点をまとめてお配りしています。→ 無料でダウンロードする

改正①|雇い入れ時に「説明を求めることができる」旨の明示が義務になります

現行のパートタイム・有期雇用労働法は、①雇い入れ時に、均等・均衡待遇や正社員転換など法8〜13条に関して講ずる措置の内容を説明する義務(14条1項)と、②労働者から求めがあったときに、正社員との待遇差の内容・理由や、待遇の決定にあたって考慮した事項を説明する義務(14条2項)を、すでに定めています。ただ実際には、労働者の側が②の権利を知らないため、説明を求められる場面は多くありませんでした。

今回の改正はここを変えます。施行規則の改正(令和8年厚生労働省令第87号)により、パート・有期雇用労働者を雇い入れたときの明示事項(同法6条1項)に、「事業主に法14条2項の規定による説明を求めることができる旨」(モデル通知書の表現では、正社員との間の待遇の相違(内容・理由)について説明を求めることができる旨)が追加されます。

実務上のポイントは3つです。

  • 書面の交付等による明示が義務です(労働者が希望した場合は、FAXや電子メール等の、出力して書面を作成できる方法によることもできます)。法定の明示事項は「説明を求めることができる旨」そのものですが、厚生労働省のモデル労働条件通知書では、あわせて申出先の窓口(部署名・担当者の職氏名・連絡先)を書く欄が設けられています。様式どおりにする必要はありませんが、明示そのものは義務です
  • 10月1日以降の雇い入れから適用されます。この明示は、労働局の案内でも「雇入れたとき(及び更新時)」とされており、有期契約の更新(=新たな契約の締結)のタイミングでも必要です。契約期間が短く更新が頻繁なパート・有期雇用では、多くの会社で施行後まもなく最初の明示のタイミングが来ます
  • 明示するということは、会社側から「説明を求められます」と案内するということです。権利を知った労働者からの説明の求めは、これまでより増えると考えて準備しておくのが安全です

なお、この明示義務は雇い入れ(更新を含む)の時点で生じるものであり、施行日に在籍している全員へ一斉に再通知する義務が生じるわけではありません。また、説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いは禁止されています(同法14条3項)。

改正②|ガイドラインに「賞与・退職金・家族手当」などの具体例が追加されます

同一労働同一賃金ガイドライン(平成30年厚生労働省告示第430号)が改正され(令和8年厚生労働省告示第203号)、これまで記載が薄かった、あるいは無かった待遇について、考え方や具体例が追加・充実されます。

待遇項目として主に取り上げられたのは、次の8つの待遇です。

待遇 改正内容
賞与 記載を充実
退職手当(退職金) 新規に追加
家族手当 新規に追加
住宅手当(転居を伴う配置変更の有無に応じて支給されるもの) 新規に追加
病気休職(療養への専念を目的とする病気休暇を含む) 記載を充実
夏季・冬季休暇 新規に追加
無事故手当 新規に追加
褒賞(一定期間の勤続者に付与するもの) 新規に追加

これらは、最高裁判例(ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件・日本郵便事件・大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件など)で争われてきた待遇が中心です。このほか、法8条の「その他の事情」の具体例(職務の成果・能力・経験・合理的な労使慣行等)の明記や、無期雇用フルタイム労働者へのガイドラインの趣旨の波及など、8つの待遇以外の改正点もあります。判例の蓄積がガイドラインに反映され、「うちの手当は大丈夫か」を照らし合わせる物差しが具体的になった、というのが今回の改正の意味です。

あわせて、次の考え方も明記されました。

  • 「正社員の人材確保・定着を図る」目的があることのみをもって、直ちに待遇差が不合理でないと当然に認められるものではない — 待遇差の説明として最もよく使われる理屈に、はっきり釘が刺されました
  • 正社員の労働条件を不利益に変更することなく、パート・有期側の改善で相違を解消することが求められる — 待遇引下げによる帳尻合わせは、法の求める姿ではないと明確化されました(正社員側の引下げが常に無効になるという意味ではなく、行う場合は労働契約法上の不利益変更の問題として別途厳格な判断を受けます)

改正③|「説明のしかた」の留意点が指針に加わります

事業主が講ずべき措置を定めた雇用管理指針も改正され(令和8年厚生労働省告示第202号)、説明を求められたときの説明の方法についての留意点が加わります。

  • 説明は、資料を活用して口頭で行うか、説明すべき事項をすべて記載した理解しやすい資料を交付する等の方法で行うこと
  • 口頭で説明した場合も、活用した資料を交付することが望ましいこと
  • 説明の求めがない場合でも、契約更新時などに資料の交付・周知を行うことが望ましいこと

つまり、資料を用いない口頭説明のみでは、改正指針の示す説明方法に沿いません。また、資料の交付が難しい場合でも、後から求められたときに閲覧させる等の工夫に努めることとされています。資料の事前作成そのものが独立の法定義務になるわけではありませんが、求められたときに指針所定の方法で説明できるよう、「見せられる資料がある」状態にしておくことが実務上求められます

このほか、正社員転換の推進措置(転換制度の内容や転換実績の明示に努め、定期的に公表することが望ましいことなど)、就業規則の変更時にパート・有期雇用労働者の過半数代表から意見を聴くよう努める際の代表の選び方、物品販売所・駐車場・保養施設などの福利厚生施設の利用に関する便宜供与への配慮についても、記載が追加されます。

会社が今から準備すべきこと|3ステップ

改正の全体像を踏まえると、準備は次の順番になります。

STEP 1|雇い入れ書面に一文を足す(期限が明確なのはここ)

10月1日以降の雇い入れ・契約更新で使う労働条件通知書・雇用契約書に、待遇差の内容・理由等の説明を求めることができる旨を追記し、モデル通知書にならって申出先も書き添えます。申出先は専任の部署である必要はなく、小規模の会社では代表者や労務担当者にする形で足ります。なお、従来からの明示事項である「相談窓口」と今回の「説明を求めることができる旨」は法的には別の事項ですが、申出先と相談窓口を同じ部署・担当者にすることは差し支えありません(申出先の記載自体は法定事項ではなく、モデル通知書に沿った実務上の対応です)。まず様式を直し、誰を申出先にするかを決めてください。

STEP 2|待遇差の「説明シート」を区分ごとに作っておく(準備の本丸・当事務所が推奨する実務対応)

説明を求められてから理由を考え始めると、適切な説明は困難になりがちです。パート・有期の雇用区分ごとに、正社員との待遇差の一覧と、差の理由を書いたシートを基本資料として作っておきます。実際に説明するときは、この基本資料をもとに、説明を求めた本人と職務内容などが最も近い正社員を比較対象に選び、個別の事情を反映して説明します(区分別の共通シートだけで説明義務を当然に果たせるわけではありません)。

待遇差が不合理かどうかは、個々の待遇の性質・目的に照らして、①職務の内容(業務の内容+責任の程度)、②職務内容・配置の変更の範囲、③その他の事情のうち、その待遇との関係で適切と認められるものを考慮して判断されます。単に何らかの違いがあるだけでは足りず、その違いが、その待遇の性質・目的とどう関係するかまで書けてはじめて説明になります。説明シートには、待遇の性質・目的と、決定にあたって考慮した事項を具体的に書きます。「パートだから」「正社員ではないから」という抽象的な説明では、十分な説明にならず、待遇差の合理性も基礎づけられません

シートを埋めていくと、「この手当の差は、性質・目的に照らした理由が書けない」という行が見つかることがあります。それが次のステップです。なお、シートを説明資料として渡す場合は、他の従業員の個人別の賃金額など、個人情報にあたる部分をそのまま載せない配慮も必要です。

STEP 3|理由が書けない差は、就業規則・賃金規程に立ち返る

説明が書けない待遇差は、直ちに違法というわけではありませんが、不合理な待遇差の禁止(同法8条)や、職務内容・変更範囲が正社員と同じ場合に、パート・有期であることを理由とする差別的取扱いを禁止する規定(同法9条)に照らして、規程と待遇そのものを点検すべきサインです。改正ガイドラインで具体例が追加された賞与・退職金・家族手当・住宅手当などを中心に、「パート・有期には支給しない」と一律に定めた規定が残っていないか、規程と実際の運用が食い違っていないかを点検します。見直しの基本は、差をなくすか、待遇の性質・目的に照らして説明がつく形に待遇を設計し直すことです(前述のとおり、正社員側の待遇引下げによる解消は、法の求める姿ではないとされています)。

この3ステップに対応する実務ツール(追記文例・説明シート・就業規則の見直し箇所チェック10項目)は、同一労働同一賃金 対応セット(無料)としてまとめて配布しています。

同業の社労士の先生へ — 当事務所では、本記事のような規程・通知文・案内文の作成を、AIと自作のスクリプトで顧問先分まとめて組み立てています。その指示ルール・テンプレート・導入手順の一式を、ご自身の事務所で同じ流れを再現できるキットとしてLINEで無料配布しています。→ LINEで受け取る

よくある質問

Q1. 待遇に差があること自体が違法になるのですか?

いいえ。法8条の適用場面では、待遇差があるだけで直ちに違法になるわけではありません。職務内容などの違いが、その待遇の性質・目的との関係で適切に考慮された結果であれば、待遇差は不合理でないと判断されえます。禁止されているのは不合理な待遇差(同法8条)と、職務の内容・変更の範囲が正社員と同じ場合に、パート・有期であることを理由とする差別的取扱い(同法9条)であり、不合理かどうかは待遇ごとの性質・目的に照らして個別に判断されます。なお、説明できる状態にしておくことは重要ですが、説明ができれば適法になるわけではありません。待遇差そのものが法8条・9条に照らして問題ないかは、別途の確認が必要です。

Q2. 小さな会社にも適用されますか?

はい。パートタイム・有期雇用労働法は、企業規模を問わず適用されます(中小企業への適用も2021年4月から始まっており、猶予はすでにありません)。今回の雇い入れ時の明示義務も、パート・有期雇用労働者を1人でも雇っていれば対象です。

Q3. 説明を求められたら、その場で答えるべきですか?

改正指針は、資料を活用した口頭での説明も認めています。ただし、準備していない状態での即答は、不正確な説明や「パートだからです」という不適切な説明につながりがちで、かえってリスクになります。実務上は、「確認したうえでご説明します」と伝えて合理的な確認期間を置き、比較対象とする正社員を決めたうえで、資料を示して速やかに説明するのが安全です(回答を不必要に遅らせてよいわけではありません)。説明した日付・相手・内容の記録も(法定義務ではありませんが)残しておくことをおすすめします。

まとめ

  • 2026年10月1日から、パート・有期雇用労働者の雇い入れ時(契約更新時を含む)に「待遇差の内容・理由等の説明を求めることができる」旨の明示が義務化されます。契約更新のたびに会社側から案内することになるため、説明を求められる場面は増える前提で準備が必要です
  • 同一労働同一賃金ガイドラインの改正で、賞与・退職金・家族手当・住宅手当など8つの待遇の記載が追加・充実され、「人材確保・定着のため」という目的だけで直ちに不合理でないとは認められないことも明記されました
  • 準備の本丸は説明シートです。書面の追記 → 説明シート → 就業規則の点検、の順で進めてください

「自社の待遇差が説明できる形になっているか見てほしい」「パート就業規則をこの機会に整えたい」――そんな段階でこそ、お役に立てます。初回相談は30分無料です。お気軽に お問い合わせ ください。料金は サービス・料金ページ にまとめています。

関連記事


**ほかの労務の疑問は 労務Q&A にまとめています。**掲載していない疑問は、同じページのフォームからお送りください。いただいた質問は、個人・企業が特定できない形に編集したうえで、Q&Aとして回答を公開する場合があります。