【2026年12月25日施行】日本版DBS(こども性暴力防止法)|塾・スポーツクラブは「認定の対象か、取るか」から。採用書類3点と情報管理の逆算スケジュール
2026年12月25日施行のこども性暴力防止法。学習塾・スポーツクラブ・習い事教室は、5要件を満たせば「認定(任意)」の対象です。取るか取らないかの判断表、誓約書・内定通知書・就業規則の書き換え箇所、確認結果の情報管理を社労士が整理します(2026年10月更新)。
はじめに|12月25日施行。塾・習い事教室は「認定の対象か、取るか」から
2026年12月25日、こども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)が施行されます。こどもと接する業務に就く人について、法が定める性犯罪の前科(以下「特定性犯罪前科」)の有無を、事業者がこども家庭庁を通じて確認する仕組みです。
学校や認可保育所などは義務です。一方、学習塾・スポーツクラブ・習い事教室などの民間事業者は、後述の5要件を満たす場合に認定の対象となり、国の認定を受けると義務になります。認定申請は任意なので、まず自社が対象か、取るかを決めることになります。
1. うちは対象?|「義務」と「認定(任意)」の2区分
| 区分 | 例 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 学校設置者等 | 学校、認定こども園、認可保育所、児童館、指定障害児通所支援事業者など | 義務(施行日から。施行時の現職者の確認には原則3年の猶予) |
| 民間教育保育等事業者 | 学習塾・スポーツクラブ・フリースクール等の民間教育事業、放課後児童クラブ、認可外保育施設など | 認定を受けた場合に義務(任意) |
学習塾やスポーツクラブが「民間教育事業」に当たるかは、次の5つをすべて満たすかで決まります(法2条5項3号、施行令1条、Q&A基礎編3-6)。
- こどもに技芸や知識を教える事業であること(大人向けの事業にこどもが例外的に参加するものは対象外)
- 6か月以上の期間に複数回の指導があり、同じこどもが複数回参加できること
- 対面で指導すること(オンラインのみは対象外)
- 事業者が用意した場所で指導すること(こどもの自宅だけで教える家庭教師は対象外)
- 教える人が3人以上いること(雇用形態を問わず、事業全体で数えます)
5つを満たさなければ民間教育事業としては対象外で、法の確認は使えません(認可外保育など別の区分に当たるかは別途確認を)。
2. 認定を「取る/取らない」の判断表
取ると得られるもの
- 認定事業者マーク(こまもろうマーク)を制服・看板・求人広告などに表示でき、こども家庭庁のサイトにも公表されます
- 法に基づく犯罪事実確認ができ、求人票に「特定性犯罪前科がないことが採用条件」と明示する根拠になります
引き受ける義務
- 申請前に、現に対象業務に従事している人に研修を受けさせ、対処規程・情報管理規程・相談体制などを整えること(認定の審査基準です)。第1章の「教える人3人以上」とは別に、審査基準として情報管理の責任者を含め従事者2人以上も必要です(Q&A基礎編8-2)
- 対象業務従事者(講師に加え、教室長など事業所の管理者も含みます)の犯罪事実確認(時期は第3章)と、以後5年ごとの再確認
- 特定性犯罪前科が判明した人を対象業務から外す防止措置、確認結果の厳格な管理と漏えい時の国への報告、年1回の定期報告
- 手数料は1事業あたり電子申請3万円(書面は3万1,500円)。更新はありません
対象だが取らない場合
法の確認は使えませんが、研修、相談窓口、1対1を避ける運用ルール、不適切な行為の禁止規定などは自主的にできます。誓約書で特定性犯罪前科を尋ねることは、認定事業者でも「合理性・必要性を慎重に判断し、本人に説明すること」とされており(Q&A基礎編7-4-2)、法の裏付けがない分、より慎重な設計が要ると考えられます。
| 観点 | 認定取得の検討材料 | 追加で確認すること |
|---|---|---|
| 講師とこどもが1対1になる場面 | 個別指導・送迎・更衣など、日常的にある | 複数の大人がいる教室でも、送迎・更衣・個別連絡の場面を点検する |
| 保護者・提携先 | 「認定は取るのか」と聞かれている、学校や自治体と連携している | 聞かれていなくても、保護者・提携先の方針を確認する |
| 体制 | 規程と研修を整える人手がある | 来年度に体制を整えてから申請する選択肢もある |
3. 施行日から逆算するスケジュール
以下は早期の申請を目指す場合の準備例で、「11月中に判断」「施行前に書類整備」は法定の期限ではなく、この記事の推奨日程です。
認定申請の具体的な画面操作を示す申請マニュアルは、2026年10月28日の更新時点でもこども家庭庁のサイトで確認できていません。公表され次第、この記事に申請手順の節を追記します。
(2026年10月28日追記)一方で、こども家庭庁は10月23日付の支援局長通知で、義務事業者(学校・保育所等)向けに「施行までに最低限実施すべき事項」をまとめた準備ガイドVer.1.2を公表しました。項目は、①制度の従事者への周知、②不適切な行為の範囲と対象業務従事者の範囲の確定、就業規則・募集要項の見直し、採用時の確認(ガイドが示す対象・方法に沿って行い、犯罪歴一般を無限定に集める運用は避けます)、③疑い発生時の報告ルール、相談体制、研修、④情報管理規程と体制、の4つです。義務事業者向けの資料で、認定を検討する事業者にそのまま施行前の実施義務を課すものではありません。ただ、認定を目指す塾・スポーツクラブが申請前に整える規程・研修・相談体制と重なる部分が多いので、認定基準と照合しながら、上のチェックリストと突き合わせて使えます。Ver.1.1からは、チェックリスト各項目の基本的な考え方(本体p15)が追加されています。
事業者向けの全国説明会も続いています。残る日程は11月6日(金)東京会場(オンライン同時配信あり・事前申込制・後日アーカイブ配信予定)、11月13日(金)仙台、11月20日(金)大阪です。会場は受付終了の表示が多いので、オンライン配信か京都会場のアーカイブ配信(公開中)をご利用ください。
犯罪事実確認書の交付目安は、日本国籍の方で2週間〜1か月、外国籍の方で1〜2か月です。認定後の採用はこの期間を見込んで進めます。急な欠員や、標準処理期間の最長期間を確保して申請したのに交付が間に合わない場合などに限り、従事開始後3か月以内(災害等は6か月以内)に確認を終える特例(いとま特例)があります。ただし特例の間はその人を該当者とみなし、こどもと1対1にさせないなどの措置が必要で、特例に当たる事情を証する書類の保存も求められます(法26条2項・施行令5条)。
- 11月:経営者は5要件を判定し、認定を検討する事業を決める。採用担当は講師・教室長(パート・業務委託・派遣を含む)の一覧に契約形態と従事開始予定日を記入する。規程担当は公式ひな型を取り、現行書類との差分と改訂担当を決める
- 12月(施行前):下のチェックリストの書類・規程の整備と管理責任者の指名。現職の対象業務従事者への研修。GビズIDの取得
- 12月25日以降:こまもろうシステムから認定を申請。審査は1〜2か月程度が目安(不備の訂正期間は含みません)
- 認定後:新規の従事者は従事開始前に確認。認定時の現職者(認定日の前日までに内定・内示を出した人を含みます)は認定から1年以内に確認し、完了したら届出
施行前チェックリスト(認定を取る予定の事業者向け)
法定義務のほか、採用トラブル防止のための推奨対応も含みます。
- 民間教育事業の5要件を満たすか確認した
- 対象業務従事者の範囲を定め、パート・業務委託・派遣の講師も洗い出した
- 求人票に採用条件を明示し、採用時の確認方法・時期・本人への説明内容を決めた(誓約書等の参考例を活用)
- 内定通知書の取消事由、就業規則の懲戒事由・試用期間の解約事由、業務委託契約書の条項を見直した
- 対処規程・情報管理規程を作り、管理責任者と、確認結果の閲覧者・保管場所・削除時期を決めた
- 現職の対象業務従事者に研修を受けさせた
認定を取らない、または対象外の事業者は、研修・相談窓口・1対1を避ける運用ルールの3つから始めると無理がありません。
4. 採用書類の書き換え3点
こども家庭庁の参考例(求人票・誓約書・内定通知書・就業規則)のうち、自社用に直す箇所だけ示します。
4-1 求人票・募集要項
特記事項に、①認定事業者であること(認定前は「認定申請を行う予定」。参考例に認定前後の2パターンあり)、②従事にあたり犯罪事実確認が必要なこと、③特定性犯罪前科がないことを採用条件とすること、④採用選考で誓約書等により有無を確認すること、の4点を書きます。
4-2 誓約書
誓約させるのは「法2条8項の特定性犯罪事実該当者ではないこと」と「申告内容がすべて事実であること」の2点です。裏面に参照条文を付け、対象の範囲(拘禁刑〔全部執行猶予を除く〕は執行終了等から20年、全部執行猶予は裁判確定から10年、罰金刑は執行終了等から10年)を本人が読める形にしておきます。内定前(履歴書提出時)に取ることが想定されています。
4-3 内定通知書
取消事由に「犯罪歴その他の重要な経歴の詐称があるとき」「犯罪事実確認に必要な手続等に対応しないとき」を入れます。採用選考の段階で有無を明示的に確認していないと、後から特定性犯罪前科が判明しても「経歴詐称」として取り消せない可能性があります(内定取消しは裁判で争われ得ます)。
5. 就業規則と現職者の扱い
就業規則の参考例で見直す条項は、①対象業務従事者の範囲、②児童対象性暴力等と不適切な行為の禁止、③犯罪事実確認の手続に応じる義務、④試用期間の解約事由、⑤懲戒事由、⑥附則(法の施行前から適用する旨)の6つです。パート用の規則があれば、そちらにも同じ定めを置きます。
現職者に特定性犯罪前科が判明したら、原則は配置転換などで対象業務から外すことです(Q&A基礎編7-5)。配置先の検討中も、他業務への従事や自宅待機などで、こどもと接する業務からは外す必要があります(ガイドラインⅦ)。懲戒解雇を検討できるのは、採用時に明示的に確認していたのに虚偽の申告または黙秘があった「経歴詐称」の場合で、確認していなかった現職者には当てはまらない可能性があります。普通解雇は、配置転換等を尽くしても選択肢がない場合の最後の手段で、有効性は個別の事案ごとの司法判断です。解雇ありきで動かないことをおすすめします。
業務委託の講師は、委託者である事業者が確認の義務を負います。業務委託契約書に「犯罪事実確認(戸籍等の提出を含む)と研修受講に応じること」を定め、応じない場合と「児童対象性暴力等が行われるおそれがあると委託者が認めたこと」を契約解除事由にしておく必要があります(ガイドラインⅥ.6(2)・Ⅶ.3)。
6. 確認結果の情報管理|「持たない・広げない・残さない」
犯罪事実確認書は国のシステム上で閲覧します。記載は該当の有無と、該当者の法定区分・裁判確定日で、犯罪の具体的内容を網羅する書類ではありません。基本方針は次の3つで、具体的な措置は情報管理規程ひな型で確認します。
- 持たない:小規模事業者には、システム上で見るだけにして転記・保存しない運用をおすすめします。「○○さんは白」のようなメモも、確認書と同じ扱いの記録になります。業務上やむを得ず保存する場合は、所定の情報管理措置が必要です(Q&A応用編8-1)
- 広げない:管理責任者を置き、閲覧権限は最小限に。メール・チャット・共有フォルダで回さず、私用端末は不可。クラウド保存は真にやむを得ない場合に限られます
- 残さない:次の期限までに、復元できない方法で廃棄・消去します(法38条)
- 確認日から5年後の年度末から30日以内
- 離職の日から30日以内
- 採用に至らなかった場合(不採用・辞退)は、従事予定日(交付がそれより遅ければ交付日)から30日以内
- 対象事業者でなくなった日から30日以内
廃棄・消去を怠ると、行為者と法人の双方に50万円以下の罰金が科され得ます(法46条3号・48条)。情報管理規程ひな型には「責任者1名・記録保存なし」の型があり、小規模事業者が選びやすい運用例です(取扱状況の確認や端末の管理は残ります)。漏えい等が起きたら、直ちに速報(目安3〜5日以内)、30日以内(不正目的の行為は60日以内)に確報を国へ行い、該当ありの情報が漏れた場合などは本人への通知も必要です。
条件を満たす小規模事業者は、こども家庭庁の窓口を通じた情報処理安全確保支援士への無料相談(最大1時間)も使えます(対象条件・申込先は出典のページ)。
まとめ|判断→書類→情報管理の順で
- 学習塾・スポーツクラブ等は、5要件を満たす場合に「認定(任意)」の対象。対象なら、取る/取らないを11月中に決めることをおすすめします
- 認定を取るなら、申請前に規程・研修・体制が要ります。申請は12月25日から、認定まで1〜2か月程度が目安
- 特定性犯罪前科が判明しても、原則は配置転換。検討中もこどもと接する業務からは外し、解雇は最後の手段です
- 確認結果は「持たない・広げない・残さない」。責任者を置き、原則として転記せず、期限で消す
認定の判断、採用書類・就業規則の見直し、確認結果の管理設計のご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。
出典
- こども家庭庁「こども性暴力防止法」 https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou
- こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月改訂) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/abc50df0/20260901_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_72.pdf
- こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年9月29日改訂) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/379c2e9b/20260929_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_100.pdf
- こども性暴力防止法施行令(令和7年政令第440号) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/f173001c/20251225_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_17.pdf
- こども性暴力防止法施行規則 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/2939f90e/20260731_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_69.pdf
- こども家庭庁「各種ひな型・参考例リンク集」(求人票・誓約書・内定通知書・就業規則・情報管理規程) https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/hinagata
- こども家庭庁「情報セキュリティの専門家(情報処理安全確保支援士)への相談について」 https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/security-specialist
- こども家庭庁 事業者向け説明会資料「就業規則改正等の事前準備の留意点」(2026年3月) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fe65e82a-082b-4929-9db6-b3d664d782dd/cb53059a/20260306_policiesc_hild-safety_efforts_koseibouhou_information-session_02.pdf
- こども家庭庁「こども性暴力防止法の施行に向けた義務事業者用施行準備ガイドVer.1.2の周知及び円滑な施行に向けた対応について(依頼)」(令和8年10月23日 支援局長通知) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/55740f81/20261023_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_108.pdf
- こども家庭庁「義務事業者用準備ガイドVer.1.2」(2026年10月23日) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/51c45b26/20261023_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_106.pdf
- こども家庭庁「令和8年度 こども性暴力防止法に関する事業者向け全国説明会」 https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/information-session-r8