賞与にも社会保険料はかかる?中小企業のための賞与支払届の書き方と計算方法をわかりやすく解説
夏季・冬季の賞与(ボーナス)にかかる社会保険料の計算方法と「賞与支払届」の書き方を中小企業向けに解説。標準賞与額の1,000円未満切り捨て、健康保険の年度累計573万円・厚生年金1か月150万円の上限、提出期限5日以内、育児休業中の保険料免除、年4回以上の賞与の扱いまで、ITに強い社労士エンジニアが整理します。
はじめに
夏季・冬季の賞与(ボーナス)を支給する時期になると、「賞与にも社会保険料はかかるの?」「賞与支払届って何を書くの?」「いつまでに出せばいいの?」といった質問をよくいただきます。
毎月の給与については算定基礎届(定時決定)で標準報酬月額を決めますが、賞与は別のルールで社会保険料を計算し、支給のたびに賞与支払届を提出します。仕組みを知らないまま処理すると、保険料の控除漏れや、提出忘れによる手続き遅延につながります。
本記事では、賞与にかかる社会保険料の計算方法と、賞与支払届の書き方・提出期限、そして育児休業中の保険料免除や年4回以上支給する賞与の扱いまで、ITに強い社労士エンジニアの視点で整理します。
そもそも「賞与」とは|年3回以下の支給がポイント
社会保険でいう賞与とは、労働の対償として年3回以下で支給されるものを指します。賞与・ボーナス・期末手当・決算賞与など、名称は問いません。
ここが重要なポイントです。年4回以上支給されるものは、賞与ではなく報酬として扱われ、毎月の標準報酬月額(算定基礎届)に組み込まれます。たとえば「年4回の手当」を払っている場合、それは賞与支払届ではなく、算定基礎届側で報酬として数えることになります。
- 年3回以下の支給 → 賞与 → 賞与支払届で処理
- 年4回以上の支給 → 報酬 → 標準報酬月額(算定基礎届)に算入
「賞与」と名前がついていても回数によって扱いが変わる、という点をまず押さえてください。
賞与にも社会保険料はかかる|標準賞与額の考え方
結論から言うと、賞与にも健康保険料・厚生年金保険料はかかります。さらに、40歳〜64歳の従業員は介護保険料も、雇用保険に加入していれば雇用保険料もかかります。
賞与の社会保険料は、標準賞与額をもとに計算します。標準賞与額とは、実際に支給した賞与額から1,000円未満を切り捨てた額です。
例:賞与の総支給額が 452,800 円の場合 → 標準賞与額は 452,000 円
この標準賞与額に保険料率をかけ、労使で折半します。
- 健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率(協会けんぽは都道府県ごとに異なり、おおむね10%前後。労使折半)
- 介護保険料(40〜64歳)= 標準賞与額 × 介護保険料率(労使折半)
- 厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 18.3%(労使折半なので本人負担は9.15%)
毎月の給与と同じ保険料率を、標準賞与額にかけるイメージです。
なお、雇用保険料は健康保険・厚生年金のような「標準賞与額」ではなく、賞与の支給額を含む賃金総額をもとに計算します。1,000円未満切り捨ての考え方は、あくまで健康保険・厚生年金の標準賞与額に関するものです。
標準賞与額には上限がある|健保573万円・厚年150万円
標準賞与額には上限が設けられています。ここを知らないと、高額賞与の保険料計算を間違えます。
- 健康保険(介護保険) … 年度(4月1日〜翌3月31日)の累計で573万円が上限
- 厚生年金保険 … 1か月あたり150万円が上限(同じ月に2回以上支給した場合は合算して判定)
たとえば厚生年金では、1か月に200万円の賞与を支給しても、標準賞与額は150万円が上限です。健康保険では、年度を通じた賞与の累計が573万円を超えた部分には保険料がかかりません。年に複数回賞与を出す会社では、年度累計の管理が必要になります。
賞与支払届とは|支給後5日以内に提出
賞与を支給したら、被保険者賞与支払届を年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも)へ提出します。これにより、標準賞与額が記録され、将来の年金額や保険給付の計算に反映されます。
- 提出期限:賞与を支給した日から5日以内
- 提出先:年金事務所・事務センター(健康保険組合加入の場合は組合にも)
- 対象者:賞与を支給した被保険者(70歳以上被用者を含む)
記入する主な項目は次のとおりです。
- 賞与支払年月日
- 賞与額(通貨によるもの・現物によるもの)
- 標準賞与額(1,000円未満切り捨て後の額)
- 70歳以上被用者・二以上勤務などの該当区分
なお、70歳以上の従業員も、厚生年金の被保険者ではなくても賞与支払届の対象です。「年金に入っていないから不要」と誤解しないようにしましょう。
賞与を支払わなかったとき|賞与不支給報告書
かつては「賞与支払届総括表」を提出していましたが、2021年4月以降、総括表は廃止されました。代わりに、事前に届け出ている賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、賞与不支給報告書を提出します。
「業績が振るわず今回は賞与を見送った」というケースでも、年金事務所には支払予定月の情報が登録されているため、不支給報告書で「支給しなかった」ことを知らせる、という流れです。これを出さないと、年金事務所から照会が来ることがあります。
見落としやすいポイント
退職する月の賞与
退職する従業員に賞与を支給する場合、社会保険料がかかるかどうかは資格喪失日との関係で決まります。原則として、資格喪失日が属する月に支払われた賞与には、健康保険料・厚生年金保険料がかかりません(資格喪失日=退職日の翌日)。
たとえば月末退職の場合、資格喪失日は翌月1日になるため、退職月(=喪失日の前月)の賞与には保険料がかかります。一方、月の途中で退職する場合は、退職月に支払う賞与には保険料がかからないことがあります。整理すると次のとおりです。
| ケース | 健保・厚年の保険料 | 賞与支払届 |
|---|---|---|
| 月末退職で、退職月に賞与を支給 | かかる | 必要 |
| 月の途中で退職し、資格喪失日の前日までに賞与を支給 | かからない | 必要な場合あり |
| 資格喪失日以後に賞与を支給 | かからない | 原則不要 |
保険料がかからない場合でも、健康保険では資格喪失日の前日までに支払われた賞与を標準賞与額として決定し、年度累計573万円の管理のために賞与支払届の提出が必要なケースがあります。判断に迷う場合は社労士に確認すると確実です。
育児休業・産前産後休業中の賞与
産前産後休業・育児休業中は、申出により社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。賞与にかかる保険料も免除の対象になりますが、注意したいのが2022年10月の改正です。
賞与にかかる保険料の免除は、その賞与の支給月の末日を含んだ、連続1か月を超える育児休業を取得している場合に限られるようになりました。つまり、月末をまたぐ短期間の育休だけで賞与の保険料を免除する、といった使い方はできません。育児休業まわりの最新ルールは改正育児・介護休業法もあわせて確認してください。
所得税はかかるが住民税は引かない
賞与からは**所得税(源泉徴収)**を控除しますが、住民税は通常、賞与支給時には控除しません。住民税は前年の所得をもとに年税額が決まり、毎月の給与から特別徴収されるためです。なお、前年所得の計算上は賞与も給与所得に含まれる点には注意してください。給与計算ソフトを使えば自動で区別されますが、手計算のときに混同しやすいポイントです。
賞与支給前に確認しておきたいチェックリスト
賞与を支給する前に、次の点を確認しておくと処理がスムーズです。
- 賞与支給日が決まっているか
- 社会保険の被保険者を確認したか
- 70歳以上被用者がいないか
- 退職予定者・退職者の支給日を確認したか(資格喪失日との関係)
- 育児休業・産前産後休業中の対象者がいないか
- 健康保険の年度累計573万円を超える人がいないか
- 賞与不支給報告書が必要な月ではないか
ITに強い社労士の視点|クラウド給与で賞与処理を「自動でそろえる」
賞与処理の手間は、標準賞与額の計算(1,000円未満切り捨て)・保険料の労使折半・賞与支払届の作成・年度累計上限の管理と、確認すべき項目が多いところにあります。これを手計算やExcelでやると、切り捨て処理や上限管理でミスが起きやすくなります。
ここで効くのが、勤怠・給与のクラウド化です。
- 標準賞与額・保険料の自動計算 — 1,000円未満切り捨てや労使折半を自動処理する
- 賞与支払届の自動作成・電子申請 — 届書を自動で作成し、e-Gov(GビズID)で電子申請する
- 年度累計上限の自動管理 — 健康保険573万円の累計を自動で把握し、上限超過分を正しく処理する
これにより、「賞与のたびに手作業でバタバタする」状態から、システムで計算・作成し、人は育休免除や退職者の扱いなど判断が必要なポイントに集中できる運用に変えられます。どのツールを選ぶかはどの労務ツールを選ぶべきか|中小企業向け労務DXで解説しています。
当事務所は、ITエンジニアとして業務システム開発に携わってきた社労士が運営しているため、賞与支払届の作成・届出と、勤怠・給与のクラウド化をセットで設計できます。「賞与・算定・年末調整に向けたデータ整理まで、毎年の手続きを仕組みで軽くしたい」という会社と相性のよい頼み方です。
よくある質問
Q1. 賞与支払届はいつ提出すればいいですか?
賞与を支給した日から5日以内に、年金事務所(健康保険組合に加入していれば組合にも)へ提出します。
Q2. 賞与にかかる社会保険料はどう計算しますか?
健康保険料・厚生年金保険料は、賞与額の1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、健康保険料率・厚生年金保険料率(18.3%)などをかけ、労使で折半します。40〜64歳は介護保険料も対象です。
なお、雇用保険加入者については賞与にも雇用保険料がかかりますが、健康保険・厚生年金のような標準賞与額ではなく、賞与の支給額を含む賃金総額をもとに計算します。
Q3. 標準賞与額に上限はありますか?
あります。健康保険(介護保険)は年度(4月〜翌3月)の累計で573万円、厚生年金は1か月あたり150万円が上限です。
Q4. 業績不振で賞与を出さなかった場合は何か手続きが必要ですか?
事前に届け出た賞与支払予定月に支給しなかった場合は、賞与不支給報告書を提出します。
Q5. 賞与の計算から届出まで任せられますか?
はい。標準賞与額・保険料の計算、賞与支払届の作成、電子申請までご支援できます。勤怠・給与のクラウド化とあわせてご相談ください。
まとめ
- 賞与(年3回以下の支給)にも健康保険料・厚生年金保険料がかかる。年4回以上の支給は報酬として標準報酬月額に算入する。
- 保険料は標準賞与額(1,000円未満切り捨て)×保険料率で計算し、労使で折半する。
- 標準賞与額には上限があり、健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月150万円。
- 賞与を支給したら、支給日から5日以内に賞与支払届を提出する。支給しなかった場合は賞与不支給報告書を出す。
- 育児休業中の賞与の保険料免除は、支給月末日を含む連続1か月超の育休が条件(2022年10月改正)。
- ITに強い社労士なら、賞与支払届の作成・届出と勤怠・給与のクラウド化をセットで設計できる。
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